346話 6月23日#23〜ヤギVS双子(?)①〜
「……あー。かったるー……」
「そう言いながら与えられた仕事をこなすのが、ミライのいいところだよ」
俺は、『やぎ座の星霊使い』だから、『ふたご座の星霊使い』を倒せと言われた。
別にやらんこともないけど、何かめんどくさそうな相手なんだよな。
「親父、できるだけ速く走れよ。とりあえず急いでるみてえだから」
「……ま。何とか頑張るよ」
俺とやぎ座の星霊の家は、建物のある土地以外は全部険しい山道になっている。はっきり言って、俺と親父以外の奴は、家の玄関にすらたどり着けない。
親父は俺を背に乗せ、足取り軽く山道を進んでいった。ジャンプする度に魚みたいな形の尾がぴくんと動く。
――ちなみに、この魚の尾に使い道はない。ウチ、池とかないし。
強いて言えば、尾の動きで親父の気分がわかる。それだけ。
やがて『やぎ座の家』の領域から出ると、親父は急に走り出した。他に掴まるところがないから角に掴まってみたが、そうしたら今度は俺の体に角が刺さりそうになった。
――でも何事もなく、『星霊界』の中央にある巨大な木の枝の上までたどり着いた。
「……そういえば、この木に何か名前ついてたな」
「『ユグドラシル』だ。覚える必要はないが」
そんな短い会話が終わった時、枝の根元に穴が開いた。
「……そういえば、ミライはふたご座の星霊使いと戦ったことはあるか?」
「……ねえよ」
「ふむ、そうか」
親父はしばらく黙ったまま歩き出したが、暗い木の幹の中を歩いている最中に再び口を開いた。
「正直に言うと、あいつの魔法はウゼェ」
「……だろうな」
カイトとテンに詳細を聞いた時に感じた感想だ。
「……だが、注意はしておけ。かなり強力な魔法も使える」
「どんな魔法だ?」
「『風』を操る」
――ん?『風』?
「……あとは、ウザくてヘボい魔法ばかりだ。気力を保て」
「あんたは戦わないのか?」
「……やっぱ、戦った方がいい?」
「俺は、1人でウゼェ相手と戦うつもりはない」
「だよねー……じゃ、俺も手伝うか」
その後もぽつぽつと話をしていたら、木に開いている他の穴から外へ出られた。
「ゲミニと戦っているのは『おひつじ座の星霊』か『いて座の星霊』か『しし座の星霊』だろ……他の2人はともかく、レオが相手してたら、ちょっとメンドーだねえ」
「……なぜだ?」
俺は首を傾げた。
「あいつ、どっちかと言うと『体術』で戦うのが得意なんだ。人数で押す相手とは相性が悪い」
――あー、あれか。1人ひとり殴ってたら日が暮れるってことか。
「体力オバケだけど、限度はあるからねえ……」
その後、親父は全速で道を走り抜け、すぐにゲミニの家へと到着した。
――そして、親父の心配が的中した。
ゲミニの土地には、子どもの形をした石の彫像みたいな姿の『何か』と、黒服の忍者の姿の『何か』が大量にいて、地面が見えないほど埋め尽くしていた。
そいつらは、口々にしゃべった。
「おぬしら、何者でござるか!?」
「我が屋敷に侵入するなど、無礼千万!」
「兄貴ぃ!やっつけちまえ!」
「拙者も助太刀いたす!」
「弟よ!そなたも戦えば、この輩を止めるのは造作もないことであろう?」
「それもそうだな!吾輩も頑張るとするか!」
「それで、おぬしら何者でござるか!?」
「『ヤギ』がいるってことは、『やぎ座』の星霊と、星霊使いだな!?」
「なるほど!さすがは兄者!今日もよく頭が切れるな!」
「……『石像』の頭が切れることが、あるのでござるか?」
「『頭が切れる』というのは、『頭がいい』という意味だぞ」
「兄者……自分で頭がいいと……?」
「もちろんでござる!アニキの頭は、よく切れているでござる!」
「そうだろ、そうだろ!?」
「……で、こいつら誰だっけ?」
「……忘れたでござる!」
「「「わーわーわーわー!!!」」」
――俺と親父は、同時に叫んだ。
「「……ウッッッゼェーーーーー!!!」」




