345話 6月23日#22〜戦いの後で〜
起き上がると、そこは見慣れた部屋だった。
――ここは、あたしの部屋――『星霊界』で生活していた時に使っていた部屋だ。
「えっとぉ……何が何だか……」
あたしがぼーっと記憶をたどっていると、部屋の扉がキイと音を立てた。
振り返ると、そこに師匠がいた。
「……あ。よかった。気がつきましたね」
師匠がサイドテーブルを鼻でつつくと、その上にお茶の入ったカップが現れた。
「これ飲んで、一息ついてください」
「え、えーっとぉ……」あたしはカップを持ったものの、まだ頭がぼんやりしていて飲む動作を忘れていた。「あたし……何でここにいるんだっけぇ?」
「あなたとスコルピウスとの戦いは、終わりましたよ」と、師匠は言った。「僕も大サソリを倒しましたし、何よりサギタリウスの星霊使いさんが無事です」
――あ、思い出した。
「あー、そういえばあたし、変態を麻痺させた気が……あ。その後おうし座の家まで帰ってきたってことぉ?」
「そうです、そうです」師匠は頷いた。
「スコルピウスの星霊はぁ……どうしたんだってぇ?」
「……僕が体当たりで、地平線のかなたまで吹っ飛ばしました」
「……じゃあ、いて座の星霊と星霊使いはぁ?」
「ウチにいますよ。下の階で休んでもらってます……と言っても、星霊使いさんの方はまだ眠ったままなんですけど」
「『星霊界』に、何とか治す方法はないのぉ?」
「うーん、ないことはないとは思いますが……ちょっと不確実ですね」
師匠は天井を見上げた。
「こちらの世界へ戻ってきても回復しないほど、強い呪いをかけられたんです。やはり、神の呪いには、神の力……『石』で対応するのが一番だと思います」
それから1時間くらい経ち、いつもどおりに動けるようになってから、あたしは1階へ下りてみた。
1階のリビングに、スコルピウスの家で見かけたケンタウルスと、初めて見る人が寝ていた。スコルピウスの言うとおり、ワンピースを着て、とても女の子らしい格好してるけど……女性にしてはデカい気がする。
「この人が……サギタリウスの星霊使い……?」
「どうも、そのようです」
「やっぱり、あたしが地球へ連れて帰らないといけないよねぇ……」
「ええ、そうですね」師匠は頷いた。「できますか?」
「もちろん!」あたしはぐっと拳を握った。「そのためにここへ来たんだもん!他のみんなのためにも、地球へ連れてかなきゃ!」
「そうですね、わかりました」師匠は、あたしにぐりぐりと頭を擦りつけた。「じゃ、気をつけて行ってきてください。これから大変な戦いになるかもしれませんが、あなたなら、きっと大丈夫です。僕もこの家から応援してますからね」
「ありがとぉー。でも痛い……」
それからしばらく経ち、ケンタウルスが目が覚めて起き上がった。
「……あー。それでウチの子を……」
挨拶と、軽い状況の説明を終えると、ケンタウルスは顎に手を当てて考えた。
「一応、これから私の家へ行って、『石』がないかどうか調べてみるよ。何かわかったら、タウルスの星霊さんに伝えるから」
そして、ケンタウルスは弟子の星霊使いを撫でながら言った。
「この子は頑張り屋だから、頑張りすぎないよう見守ってあげて……あとは頼んだよ」
その後、ケンタウルスが自分の家へ帰っていくのを見送ってから、あたしは大きな女の子を肩に担いで、地球へと帰還した。




