342話 6月23日#19〜ウシVSサソリ①〜
あたし、ミィは『おうし座の星霊使い』だから、家に帰ってきても、すぐに『さそり座の星霊』の元へは行けなかった。太陽を挟んで、ちょうど反対側にあるから。
――まあ、ここ『星霊界』では、真ん中にあるのは『太陽』じゃなくて、星の女神様の『家』なんだけど。
あたしの師匠たち『十二星座』の星霊の家も、そうじゃない星霊の家も、全て星の女神様の『家』と繋がっている――つまり、他の星霊の家へ行くには、女神様の許可が必要なの。
――すぐ隣の家に行くなら別だけど。
「なるほど、そういうことですか」あたしの師匠、『おうし座の星霊』は、あたしの説明をすぐに理解してくれた。「では、その星霊使いを助けるために、すぐにスコルピウスたちの家に向かって出発しましょう」
師匠は、見た目は完全に『ウシ』だし、普段もその姿どおりにのんびりしているんだけど、走らせるとめっちゃ速い。
「じゃあ、僕の背中に乗ってくださいね。超特急で行きますから」
――というわけで、あっという間に星の女神様の元へとたどり着いた。
ここって、何度見ても変な場所。空中に巨大な木が浮かんでいて、あたしたちは今、その枝のうちの1つに乗っている。
普通、許可が下りるまでは時間がかかって、枝の根元にある入り口はずっと閉まっているんだけど、今回は特別みたい。すぐに大きな穴が開いた。
師匠はその中へ入って、ずんずんと奥へ進んでいった。
周りは真っ暗で、足元の『道』だけが光っている。
「……星の女神様ってぇ、ここのどこに住んでいるんだっけ?」
「樹冠のあたりかな」師匠は早足で歩きながら言った。「あの神も十分大きいんだけど、この木はもっと大きい」
――何か、見た目以上の大きさがあるみたい。
「そろそろ『反対側』に着きますね」しばらくすると、師匠はそう言った。「また走りますから、振り落とされないよう、しっかり掴まってください!」
そして、木の外に出た途端、師匠はまた走り出した。はっきり言って、息をするのも大変。
やがて着いた先には、別の星霊の家があった。何か、全体的に凍っている。
目的地に着いた後、師匠はあたりを見渡した。
「……ふむ。あっちの方が騒がしいですねー」
家庭菜園|(?)の凍った野菜の隣を歩きながら、師匠は耳をそばだてていた。
「……あ。こっちです」
言うの忘れてたけど、星霊の『家』って、結構広いんだよね。地球と同じ球の形をしているんだけど、建物が1つぽつんとあって、その周りに畑とか練習施設とかあって、あとは何もない。
少なくともあたしたちの『家』には、師匠のごはんである『草』が生えている土地が広がっているだけだし、このスコルピウスの『家』では、スケートリンクみたいな氷の地面が、延々と続いているだけだった。
師匠はとことこ歩いてきょろきょろ探し、30分くらい経って、ようやく喧嘩の起こっている場所を突き止めた。
そこでは、『大きなサソリと1人の男』対、大きな体の――け……けん……『ケンタウルス』だっけ?――という、2対1の戦いが進行していた。
――けど、どうもケンタウルスが押されているみたい。ただでさえ1人なのに、矢が全然敵に刺さっていない。おとめ座の星霊使いの言うとおり、スコルピウスは体が丈夫で硬いみたい。
「……あ。転んだ」
ケンタウルスが、足元から凍りそうになっている。体中傷だらけだし、もう限界なのかもしれない。
あたしが背中から下りると、師匠は勢いをつけてサソリに向かって突進していった。
――さすがのサソリも、師匠の頭突きで体が宙を舞った。
「助けにきたよぅ!」あたしはハンマーで、ケンタウルスの足元の氷を割った。
「ありがとう」ケンタウルスは、あたしの方を見て微笑んだ。
「……あんた、誰?」
声の聞こえた方を振り返ると、人間の男が立っていた。顔がきれいなのに、めっちゃ怖い顔でこっち睨んでる。
「あたしはミィ!タウルスだよ!」あたしがハンマーを地面に突き刺すと、氷に亀裂が入った。「ここのどこかに『いて座の星霊使い』がいるんでしょー?返しなよぉ!」
後半の星霊使いに関しては、あたしなりに推理しただけだけど、どうも当たりみたい。
「あのサギタリウス、詐欺だろ!」スコルピウスは怒鳴った。「スカート履いてんのに、服脱がしたら男だったし!」
「あんた、何他人の服を勝手に脱がしてんのぉ!変態!!」
「僕を『変態』扱いするな!!」
――いや。誰がどう考えても変態でしょ、あんた。
「とにかく!」あたしは胸を張った。「あんたの相手はあたし!……ねえ。その間に、あんたの星霊使いを助けてあげなよぅ!」
後半はケンタウルスに向かって言ったんだけど、ケンタウルスは「恩に着る」と短く言い残して、急ぎ足でこの場を去っていった。
「……チッ!」スコルピウスは、ケンタウルスの足が速すぎて、追うことはできなかったみたい。「お前みたいな『幼女』には興味がないんだけど……」
「……あたしは、あんたより年上よ!!」
あたしは、ハンマーを振り上げた――スコルピウスはこの激重ハンマーに、どれだけ耐えられるのかなぁ?




