339話 6月23日#16
キーラとの戦いは、予想どおり攻略が難しかった。
キーラはやはり、剣で突いていこうとした。
俺は右利きなので、右腕に剣が当たるのは避けたいが、相手の剣がある方に自分の腕があり、守るのが難しい。どうしても、左へ跳んで避けるしかなかった。
――そして、要所要所で、ドラゴンが攻撃を仕掛けてきた。
予想とは異なり、どうもドラゴンなりに考えて攻撃しているらしい。キーラの動きと連動して、避けにくいところへやって来て噛みつこうとしてくる。
牙に毒があるのかどうかはわからないが、例えなくても鋭いので、噛みつかれたら確実に体に穴が開く。
実質1対2で戦っていることになるし、キーラには、まだ使っていない『石』の魔法がある。
ちなみに、そうやって状況を分析している合間に俺の剣がキーラに当たり、キーラは左腕から軽く血を流していた――ということは、体が『霧』になって攻撃をすり抜ける魔法は使えないようだ。
「……なかなか戦いに慣れているようだな」
キーラが俺に話しかけてきた。
「イレギュラーな戦いでも、柔軟に対応している」
「そりゃ、どうも」
「……そろそろ、魔法が見たいだろ?」
キーラは微笑んでいた。
「たぶん、シーラはほとんど使わない魔法だ」
そして、キーラは「『ヘビーフォッグ』!」と叫んだ。
突然、フィールドに濃い霧が発生した。はっきり言って、何も見えない。
――と、思ったら、体に何か、ずっしり重いものがのしかかってきた。
「……何だ!?」
上を見上げても霧しか見えないが、何かが俺を押し潰そうとしている。
俺は、上に向かって腕を突き出した。
――すると、『何か』が上に持ち上がった。
「……ん?」
俺はそれを、そのまま遠くへ投げ飛ばした。
「……んん?」
――ズシーーン!!
重いものは地面に落ち、重々しい音を立てた。
霧が晴れると、重かったものが一瞬何なのかが見えた。
「……『霧』……」
――どうやら名前どおり、『霧』が『重く』なる魔法らしい。黒い霧が大きな岩のような塊になって、地面に落ちていた。
「……君、随分な怪力の持ち主だね」
「え?」俺は目を瞬いた。
「一度、興味本位で今の魔法の重さを量ったことがあるんだが、」
キーラは、右手を開いて、前へ突き出した。
「……500キロあった」
「え……」
――さすがに俺、そんな重いものを持ち上げる訓練はしたことなかったんだが……
――と、思ってから、ふとミィの顔が思い浮かんだ。
「……『石』の力か」
俺は『おうし座の石』の力のおかげで、怪力になった。らしい。
「……ということは、この魔法は君には効かないということだな」
キーラは、再び剣で突く戦法を取った。
「残念だ。今の魔法で、一瞬で決着つくことも多いのに」




