338話 6月23日#15
――さて。
戦いを攻略するなら、まずは敵をよく観察することだ。
「『石』の力を使う」と言っていたので、キーラも『うお座の星霊使い』と同じ魔法を、1つまたは2つ使える。
そして、昨日テンから詳細を聞いたが、ピスケスことシーラは、『霧』だけでなく『布』も使って戦っていたらしい。それも妙な使い方をしていたとか……
そういえば見たところ、キーラは武器らしいものは何も持ってない。シーラと同じ『布』が武器なのか、武器を隠し持っているのか、はたまた完全に武術か魔法に特化しているのか……
――そんなこと考えていると、突然キーラは指笛を鳴らした。
「……ミュウゥ!」
可愛らしい鳴き声が聞こえ、俺はきょろきょろと声の主を探した。
やがて、空からドラゴンが降りてきた。
――それは、今まで見たことのないドラゴンだった。
まず、めちゃくちゃ小さい。人の手の上に乗れるくらい小さい。今はキーラの腕にとまり、キーラの顔を見上げている。
それから、大きさだけでなく、色も可愛らしい。ほのかに肌色っぽいピンクで、目は緑色。鼻の上に1本の角が生えているが、小さいので全然怖くない。
そして、背中に短剣を背負っていた。小さな短剣だったが、ドラゴンが動くのにギリギリ邪魔にならない程度の大きさがあった。見た目は装飾品の剣に似て、鞘は黒く、柄は金色、そしていくつか宝石が埋め込まれていた。
「このドラゴンは、『サムベリーナドラゴン』といってな、」と、キーラは話し始めた。「『世界最小のドラゴン』と言われている」
「……ミュ?」ドラゴンは、首を傾げた。
「……最小とはいえ、ドラゴンはドラゴンだ。動きに注意するといい」
するとキーラは、ドラゴンが背負っていた剣の柄を持って思いっきり引き抜いた。
――剣は長かった。
剣は、鞘の長さの10倍くらい長かった。細身だが、俺の剣より長い。先端がとても鋭利で、『突く』ことに特化しているみたいだ。
――そして、特徴はもう1つ……
「……左利き……」
キーラは、左手で剣を持っていた。
キーラの剣の柄は片手でしか握れない長さだし、よほどのことがない限り、右手に持ち替えることはないだろう。
俺は闘技士としていろんな人の相手をしてきたが、左手で戦う人にはほとんど会わなかった。例え素では左利きでも、右手で武器の練習をしている人が多いからだ。
「……随分癖のある剣士だな」
「そうだろう」キーラはふっと笑った。「……では、そろそろ始めるか」
「……ああ、」俺はキーラを見据えた。「よろしく頼む」




