337話 6月23日#14
「……なるほど。テンって、こうやって今まで戦い抜いてきたんだな」
俺は、ゴーグル越しに会場を眺めながら、ぼそっとつぶやいた。
「思えば、テンが敵と戦っているところって、ほとんど見る機会がなかったからなあ……」
先ほど、テンが目を瞑っているのを見て、俺も目を覆っていたが、途中で思いついてゴーグルをかけてみた。
見ると、観客がフィールドに投げたものが宙を舞い、砂嵐かと思うほど大量の砂が下から巻き上がっていた。
それがだいたい収まってきた頃に、テンは立ち上がってデュカに近寄り、至近距離で銃を撃った。
――デュカが血を流している様子はないので、たぶん麻酔弾を撃ったんだと思う。
何にせよ、デュカは地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
「……あー。ごめんねー、カイト君」俺のそばまで帰ってきたテンが、そう言って謝った。「フィールドの仕掛け、壊したのも全部直っちゃってると思うんだー……」
「……いや、気にするな。『ある』ってことがわかるだけ、心の準備ができる」
俺は、テンの肩を叩いた。
「……やったな。きっとレイは、生きてお前の元へ帰ってくる」
テンがふっと笑ったのを見て、俺はゴーグルを頭から外して、周りの空賊たちの様子を見た。
「……で?俺は何すればいい?」
近くにいた背の低い空賊がハッとして、突然その場からいなくなった。
数分後、その空賊が戻ってきて言った。
「……今すぐ、キャプテンと戦います。どうぞフィールドへ移動してください」
――なぜ、急に丁寧語に……?
俺がフィールドに上がると、なぜか会場全体が静まり返った。司会と審判をしていたはずの空賊たちは、いつの間にかどこかへいなくなっていた。
「……それでいいのか……?」
「カイト君。『なかなか面白い試合だった』と、君の相棒に伝えとけ」
振り返ると、キーラがこちらを見つめていた。
今は帽子を普通に被っているので、とても明るい不思議な色の目をしていることがわかった――薄く緑色っぽいが、光の具合で、一部が赤や青っぽく色が変化する。
髪は長く、高めのポニーテールで、色は紺。かなり着古された服をワイルドに着こなしているが、どことなく妖艶さも感じる――あれ?何かどこかでそんな人、見たことあるような……?
「……忘れなかったら、伝えとく」
俺はそう返事をして、キーラと対峙した。
「……さて、」キーラはニヤッと笑っていた。「さっきの試合があまりに面白かったんで、フィールドの装置は全て止めるよう伝えておいてある」
――あら?
「……というわけで、『わりと』公平な試合になる。私の期待に応えるような試合をしてくれ」
「……わかった」
俺は深呼吸して、フィールドの端に立った。




