336話 6月23日#13〜不公平な戦い④〜
「うおああああ!!」
デュカは、何度でも突進してくる。
でももう、僕を妨害するものは、何もない。
僕の回転式拳銃が火を噴いた。
デュカは反射的に、右へ飛んだ。
――結果、銃弾はデュカの左腕を切り裂くように飛んで行った。
「……いってえええ!!!」
その怒りに任せて、なのかどうかは知らないけど、デュカは豪快に火を吐いた。
僕も慌てて飛び退いた――銃の火薬に火が点いたら、絶対僕死ぬ!
「忘れてた……!」
火炎にも何か対策を施さないと、僕は落ち着いて戦えない!
「……あ、そうだ!」
僕は銃を仕舞い、魔法の呪文を唱えた。
すると、僕の前に魔法陣が現れて、激しい水流がデュカの方に向かって流れた――あ。これ、この前槍使いのお姉さんたちを押し流したのと、同じ魔法。
――相手が『火』だから、効くかなと思ってやってみたんだけど……
「ほあああああ!!」
デュカの前に、大きな火球が現れた。火球は、水を飲み込み、巨大化した。
「……え?」
――僕は、咄嗟に伏せる以外、何もできなかった。
「おりゃあああああ!!」
レイさんのカウンター技『イグニスフィア』が、僕の背中の上で炸裂した。
「……わああ!!」
直撃はしなかったんだけど、爆風に煽られて飛び散った何かの破片が、僕の体に降り注いだ。
しばらく経って、僕は何とか立ち上がった。いろんなものの欠片が体に当たって痛かったし、爆風はめちゃくちゃ熱かった。
後ろを振り返ると、フィールドと観客席を分けてた塀の一部が、跡形もなく壊れていた。
「……2つも魔法が使えるんだ」
「すごいだろ!?」デュカは、得意そうに言った。「それは、俺が……!」
「……たまたま『太陽星座』と『月星座』が、両方『おひつじ座』だからでしょ?」
「……え?あ、ああ。そうだが」
――素直なのは、彼のいいところだね。
「……それにしても、」僕はあたりを見回した。「……あー、すごいことになっちゃってるねー……」
観客が投げつけるガラクタ。
あれこれ爆発があって、あちこちで壊れている塀。
まともに歩けるところが、フィールドの中央にしかない。
――そしてそこを、デュカに占領されていた。
「……あー。あの手試してみるかー」
僕は、足元の破片を蹴りながら、ゆっくりと歩き出した。
「……おい。試合放棄か?」
デュカは、かえって不信感を抱いているようだった。
「…………やってみよう」
僕は深く息を吸って、デュカの方を振り向いた。
「デュカさん、」
「何だ?」
「部下のみなさんに、『無闇にものを投げるな』って言っておいてね?」
「……は?」
僕は目を瞑って帽子で隠し、その場にしゃがみ込んだ。
――直後。
「「「……わああああああ!!!」」」
――会場中から、悲鳴が聞こえてきた。
目を瞑っているからよくわからないけど、何が起こっているのかは知ってる。
――そしてやっぱり、デュカさんもかなり混乱していた。
「痛っ!貴様、何を……う、砂が……見えない!」
僕は、会場全体に『みずがめ座の石』由来の、『復元する』魔法をかけた。
――結果、ぐちゃぐちゃになっていたフィールドが、元に戻っていった。
酒瓶も皿も何もかも、みんな元の形に復元されながら『元の持ち主の手元』へ戻っていったし、戦いで巻き上げられた砂も『元の位置へ』戻っていったし――心残りは、せっかく壊したフィールドの装置を全て直しちゃったことかなぁ……
別に相手は空賊だし、頭に何が降りかかろうと、目に何が入ろうと、僕には関係ないんだけど。
「……いてええええ!!!」
しばらくたち、もういいかなと思って帽子を被り直し、目を開けると、会場中が大混乱に陥っていた。みんな、頭にたんこぶ作って、体にナイフを刺して、目に砂が入って、何かいろんなことを叫んでいる。
――それは、デュカも同様だった。デュカは嵐の中心にいたせいか、特に目が砂にやられていた。顔を手で覆ってて、動けなくなっていた。
僕はゆっくりと、デュカの方へ歩いていった。
「……いてええええ……」
「……1つだけ、デュカさんに言いたいことがあるんだけど、」
僕は歩きながら、回転式拳銃の銃弾を入れ替えた。
「……訪問客を、無闇に殴ろうとしたり、牢屋に入れたりしないでね?」
僕はデュカから、銃口が10センチと離れていない距離で、引き金を引いた。
銃弾はデュカの左胸に当たり、デュカはそのまま地面に倒れた。




