333話 6月23日#10〜不公平な戦い①〜
「さーー!みなさーーん!盛り上がってますかーーー!!」
「「「おーーー!!!」」」
僕はフィールドの脇で待機させられていた。
正直、こんな多くの人が見ている中で戦うなんて、初めての経験だった。
緊張しているというのか、集中力が切れそうな気がして怖い。
その時、モルガンさんたちとは反対側の客席に座っている若い女が、拡声器まで使って何か叫んでいた。どうやら司会をするつもりのようだ。
「……さー!御年90歳のカエデ様の誕生日を祝ってーーー!!!」
――まさかの誕生日パーティーだった。
「テン対デュカ様のバトルが始まります!!!」
僕は後ろの空賊に促されて、前へ一歩踏み出した。
観客席を見ると、空賊たちが不思議そうな顔で、僕の方を見つめている。たぶん、コートと帽子をきちんと被っている人が、ここでは珍しいからだろう。
カイト君が、「ここの雰囲気は闘技大会に似ている」と言っていた。それから、カイト君は慣れているので「気楽に頑張れ」とか言ってたけど……自分とレイさんの命がかかってるからなあ……
「闘技士になると、こんな気持ちになるのかー」なんて思いながら、僕はフィールドの片方の端に堂々と立った。
僕は、全く負けるつもりはない――『本性』出してでも、敵からレイさんの『石』を奪い取ろうと考えていた。
――空賊相手に、慈悲など要らない。
僕は息を大きく吸った――大丈夫。
すると、急に大きな歓声が上がった。反対側のフィールドに、デュカとかいう男が入ってきた。
一応、お辞儀して「よろしくお願いします」と言ってみたけど、歓声にかき消されて、自分でもよく聞こえなかった。
たぶんみんなデュカが勝つと思ってるんだろうな……
しばらくして、ようやく歓声が止んだ。僕は、改めて挨拶を……
「では……バトルスタート!!!」
――要らないみたいだね。
何か審判らしき人がいるんだけど、たぶん空賊だから、僕に有利なことは何も言わないと思う。
だから……
――ズダン!!
試合開始の1秒後に、デュカに向けて銃を撃った。
デュカは、肩をかすめて痛みを感じたようだ。何か左肩を押さえている。
――でも、僕は不思議だった。ちゃんと心臓狙ったはずなのに……
「……はあああああ!!!」
デュカが、こちらに向かって突進してきた。ここまでまっすぐ来られると、心臓が狙い放題なんだけど。
僕は、デュカが目と鼻の先に近づくまでに、2発目の銃弾を撃った……あれ?また外れた。
――僕の腕で、こんなわかりやすい奴の心臓を狙えないということは、十中八九このフィールドに仕掛けが施されている。空賊の試合なんだから、公平性があるなんて考えない方がいい。
「うおおおお!!」デュカは僕の顔目がけて拳を突き出した。
僕は避けることはあえてせず、ストレートに伸びたその右腕をがっしり掴んだ。
――途端に、会場から声が消えた。
「貴様、そのナリで、随分な力があるな」
「……僕を舐めるな」
会場が、再びさまざまな声に包まれる。
誰も、僕がデュカの拳を正面から止められるほど力の強い人間だとは思ってなかったんだろうな。
「何と、デュカ様の直球ストレートパンチが、あっさり塞がれた!見た目以上に『野菜男』は怪力だった!!」
「……僕を『野菜男』って呼ぶな!人を見た目で判断するな!!」
この後テン自身が言っていたように、彼は筋力を増強する魔法が使えます。レイを『お姫様抱っこ』するのも楽々できます。意外と強い子なんですよ!




