332話 6月23日#09
「……だが、」モルガンの隣に座っている女が、こちらを向いた。「確かに見た目は面白いが、私には『腰抜け』にしか見えんな」
「なら、こいつらに発破をかけてみろ。意外とよい返答を得られると思うぞ」
「……なるほど」
「嬢ちゃん、いかがいたしましょう?彼らを戦わせるか、斬首の刑に処するか、どっちにしますか?」
カエデは『嬢ちゃん』との会話でも、やけに物騒な言葉を使った。
「………………」
――決めかねているようだ。
代わりに、カエデに質問を返した。
「こいつらの名前は訊いたか?」
「……あー。訊ねておきながら、返事聞くのを忘れてたわ」カエデはこちらを振り向いた。「お名前は?」
「……俺はカイトで、こっちはテン」
「ふーん」
カエデに『嬢ちゃん』と呼ばれた女は、身を乗り出してこう言った。
「『カイト』と『テン』だな。私のことは『キャプテン』と呼べ。または『キャプテンキーラ』」
どうやら、この人の名前はキーラらしい。
キーラは、後ろに控えている誰かに向かって手招きした。それに応じ、現れたのは、あの尋問していたおっさんだった。
「デュカ。『石』をくれ」
「……お、おう」
デュカは『石』を取り出し、キーラに手渡した。
「さあ、見てのとおり。ここに君たちの欲しい『石』がある」
キーラはそう言って、デュカから受け取った『赤い石』と、もう片方の手で自分の服のポケットから取り出した『青い石』を見せた。
「今から、この『石』の今の持ち主、つまり私とデュカが、お前たちと1人ずつ戦う……もちろん、我々は『石』の力を使う」
すると、キーラは石を持ったまま、手を自分の背中に隠した。
「……さあ、どちらか選べ」両手を拳にして、俺たちの方へ突き出した。「その『石』の持ち主と戦う。勝った方の『石』はやる。負ければ、その『石』は手に入らない――さあ、どっちを選ぶ?」
「……僕、こっち」
テンが、キーラの右手を指した。
「じゃあ、俺はこっちだな」俺は、必然的に左手を選んだ。
「……決断が随分早いな」キーラは面白そうに目を細めた。「結果は……」
右の拳に入っていたのが『赤い石』、左の拳に入っていたのが『青い石』だった。
「……レイさんのために、絶対負けられない」
そのテンの様子を見て、「キーラの手の動きを見て、どちらがレイの『赤い石』――『おひつじ座の石』――か、見破っていた」と悟った。
――確かに、テンには賭博の才能があるのかもしれない。
「試合はすぐに始まる」キーラは、デュカに『赤い石』を手渡しながら言った。「本気で殺しに来い。楽しませろ。空賊に慈悲を与えようものなら、すぐにお前らを斬り殺す」
「……いいよ、やってあげる」
「俺たちの力を、見くびるなよ」
俺たちの目の色が変わったのを見たキーラは、笑いながら『青い石』をポケットにしまった。
「……期待してる」




