331話 6月23日#08
「いやぁ、ウチのデュカがね、ひどいことしましたよね……びっくりしたでしょう?ほんと、ごめんなさいね。客人をいきなり投獄するなとあれほど言ったのに、デュカの耳は一体どこについているのやら……ああ、そうそう。『お友だち』のドラゴンさんにも悪いことしましたね。きっと心配したでしょう?大丈夫ですよ、まだ生きてますから。さすがあの子、400年も生きているだけありますね。とっても賢い子で。あなたたち、本当にいい『お友だち』を持っていますね。私も思わず誘拐したくなりました……ああ、そうそう。1つ訊きたいことがありました。名前ですよ、名前!私はカエデっていうんですが、あなたたちの名前を伺っても?……あ、でもそんなことしたら、嬢ちゃんが怒るかもねえ。「人にいちいち名前言うな、訊くな。言うこと聞かねえとその首吹っ飛ばすぞ」って言われちゃったからねえ……あ、でももう私、名前言っちゃった。あら、どうしましょう?首が吹っ飛ぶ前に、嬢ちゃんを海に蹴り落とすべきですかねえ……?」
――何か、歩いている間、延々と自動的に口を動かし続ける人だった。
しかも、のんびり呑気なことを言っているところどころで、だいぶ物騒なことを言ってる。
「……あ、あのー、カエデさん?」
テンが勇気を出して、カエデに話しかけた。
「……はいはい。何でしょう?」カエデはこちらを振り向いて、ニコッと笑った。
「僕たち、どこへ連れてかれるんでしょうか?」
「もちろん、『宴会』の場に行くんですよ」
「『宴会』?」
「……あなたたち、『宴会』の『余興』に、お呼ばれされてるんですよ」
――これは、事態が好転しているのか悪化しているのか……
「お二人には、戦っていただきます」
「えっと……誰と?」
「『デュカ』と『キーラ』ですよ」
『宴会』とか言うので、てっきり大広間みたいなところにテーブルが並んでいるのかと思ったら、実際の会場は『闘技場』を小さくしたような場所だった。空賊たちが、それぞれ思い思いの酒と料理を手に持ち、観客席でギャーギャー騒いでいた。
そして、その観客席の一番前にある『特等席』に、豪華な椅子に座った女の姿があった。帽子を目深に被り、椅子の肘掛けに肘を乗せて何事か考えているようだった。
カエデが、俺たちを連れて女に近づくと、女は目を上げて、こちらを見た。とても鋭い眼光を浴び、俺もテンも萎縮してしまった。
「……へえ、なるほど」女は目を細め、隣にいた女性に話しかけた。「お前の『友人』たちは、確かに面白そうな奴らだな」
「……まあ、『脳筋』と『野菜男』だからな。つまらなくはないだろう」
その言い方から、モルガンであることはすぐわかったのだが、いつもの黒服ではなく、華美で露出度の高い服を着ていた。
モルガンも、隣の女と同じような椅子に座っていたが、両肘を肘掛けに置いて足を組んでおり、『砂漠の国の女王』みたいな格好をしていた。
「……あー、モルガン?」俺は恐る恐る話しかけた。「その格好は、どうした?」
「ここにいる奴らが、今は在籍していないここの『女王』の座を譲ってくれることになってな。その服装らしい」
――ホントに女王だった。
「我が貴様らを「かなりの手練だ、余興としては十分見応えがある」と言ったら、なぜか本気にしてな。それで牢から出られたのだ、感謝しろ」
「「あ、ありがとう……」」
――どうやら、彼女なりに救ってくれていたようだ。




