330話 6月23日#07
その後、部屋を隅々まで調べたら、一応トイレはついていた。
「こんな小さいトイレ、他に何に使えるかー!!」
あとは、ベッドが2つ。その下にあるスペース含めいろいろ調べたが、特に仕掛けも何もなかった。
「この部屋、マジで何もねえ」
「しかも、外の様子がまるっきりわからないし」
地下なので窓がないのは当たり前だが、扉は妙な作りになっていた。
――たぶん、食事を運ぶのがロボットであることと関係していると思うのだが……
「……この扉、小さいよね」
「そうだな」
壁のように分厚い大きな扉の中に、小さい扉もついていて、ロボットはそこを出入りしていた。
その扉は薄くて、こじ開けるのは難しくなさそうだが、あまりに小さくて、大人が通って出るのは不可能だ。
しかも、どうも定期的な見回りも同じロボットがやっているらしく、扉にも一切窓がない。
「……刑務所も、この牢屋を見習ったら脱獄囚が減ると思うのに」
床、壁、扉、天井、すべてが鉄でできているし。
レイがいれば熔かすことができそうだが、そんなことされたら俺たちが死ぬ。
「……やっぱ、モルガンさんが何とかしてくれることを祈るしかないのかなー……」
「俺はどうもしてくれないと思う」
「……じゃあ、僕は『助けてくれる』方に賭ける」
「……賭博まで、ここでやるのか」
「僕、結構得意なんだよ」
「どこでやってた?」
「……教えないけど」
――うーん。こんな無駄話をしてていいのだろうか。
「……あー、もう2時過ぎてる……」
テンがだんだん落ち込み始めた。
「レイさんに会いたいよー……まだ僕の気持ち、全然伝えきれてないのに……何で神様って、こんなに酷いことするんだろ……あ、力を失ってるからか」
「……俺もなあ、あいつを見捨てたからなあ……あんなところで死んでいい奴じゃねえのに……」
「……カイト君、ごめんね」
「え?」
「僕、「レイさん死んだら銃の餌食にする」とか言っちゃったけど、君の責任感を煽るつもりじゃなかったんだよ」
「あ、いや。気持ちはわかってるつもりだから……」
「ホントに、自分勝手でごめんね……」
「ま、まだ死んだって確定してないから……」
「僕が不甲斐ないばかりに……」
「不甲斐ないのは俺も一緒だと……」
――ガチャ!
突然の音に、俺とテンはビクッとした。
重くて分厚い鉄の扉が開く。
そして扉の外から、腰の曲がった高齢の女性がゆっくり入ってきた。
「「……?」」
俺たちが驚いて固まっていると、やがて女性が口を開いた。
「……ほー、なるほど……」
ペースの掴めないゆっくりした口調だった。
「……ちょっとついて来ておくれ」
――なんだろう。この『自宅に訪問してきた客への接待』感は。
とりあえず、俺もテンも女性のあとをついていくことにした。




