328話 6月23日#05
よく観察すると、小島は『ネプトゥヌス島』の一部だということがわかった。
島の大部分は空に浮かび、小島の上空を取り囲むように存在していた――浮遊している原理は不明だが。
そしてその『小さな穴が中央に開いたドーナツみたいな島』のほぼ全域が、『ネレイデス空賊団』の本拠地となっている……ようだ。
俺たち3人は空賊たちに捕まり、島の地下|(海水面より上)のどこかにある小さな部屋まで連行された。テーブル1つと、椅子が4脚しかない部屋だ。
俺たちは椅子に座らされ、俺たちの前に、さっき島にいる俺たちのところまで飛んで来たおっさんが座った。
「……で、もう一度言うが、」おっさんは、俺たちを尋問し始めた。「こんな美人の『レジェンダリ』を連れてウチに来たということは、俺たちに宣戦布告をしに来たってことだよな?」
――モルガンは人の姿になり、俺とテンについてきた。曰く、
「あんな汚らわしいドラゴンどもと同列に見られるなんて、我が沽券に関わることだ」そうだ。
――というわけで、おっさんの『美人』という言葉は、人間の姿のモルガンを見た感想だった。
「……いや、さすがに3人だけで宣戦布告はしませんよ」俺は顔を引きつらせながら言った。「ただ、『石』をちょっと借りたいだけで」
「……そもそも、どこでその『石』のことを知ったんだよ?」
「あー。長い話にはなるんですけど」
「俺は長い話が嫌いだ、簡潔に話せ」
「えっとー……」
テンも顔を引きつらせている。
「『月の神』から『石』を集めてほしいと頼まれて、集めているうちに、最終的にここまでたどり着きました」
俺は頑張って、今の状況を1行にまとめた。
「……それだけ?」
「いや、『それだけ』って……」
――頑張って1行にしてあげたのに。
「……んー、まあいいや」おっさんは、両腕の袖をまくった。「とりあえず、男は1発ずつ殴ろう」
「「……何で!?」」
俺とテンがのけぞるのを見て、モルガンは口を開いた。
「やめておけ。そいつらは、我が光線を浴びただけで5分間も動けなくなった者だ。貴様が殴ったら、1発で死ぬぞ」
――これは『フォロー』と言っていいのかどうか……
「じゃあ、こういうのはどうだ?」おっさんは、テーブルに肘をついた。「『石』と『レジェンダリ』を交換する」
「……貴様、我を何だと思ってるんだ!?」
――やっぱり、モルガンは怒った。
「……希少価値のあるドラゴンだ」
おっさんは、そう表現した。
――空賊とは、そういう連中だ。
馬と同列に扱われたモルガンが怒った時に、ソフィアがそう言ったことを思い出した。
「いくらなんでも、『友だち』を『お金』みたいに、交換条件として出すことはできません」
そう言ったテンにモルガンは鋭い目を向けたが、何も言わずに顔を背けた。
「へえ、『友だち』ねえ」おっさんは、再び両腕の袖をまくった。「やっぱり男は1発殴っとこう」
「「だから、何で!?」」
「――『レジェンダリ』なんていいドラゴンに乗ってここまで来たんだから、俺たちとの『交換条件』として連れてきたと考えるのは、当たり前だろ?」
「「えー……」」
「……じゃなけりゃ、1発殴る」
「「えー……」」
――空賊は、想像以上に何か面倒くさい奴らだった。
カイト:結局何で島が空中に浮かんでいるのか、わからないままだな。
テン:そうだね。空賊たちが教えてくれるくらい親切な人たちだとよかったんだけど。
おっさん:仕方ねえなあ。俺が直々に教えてやるよ!
テン:……意外と親切だった。
おっさん:おう。実はな……
カイト:ああ。
おっさん:……俺もわかんねえ。
カイト、テン:は?
おっさん:……てか、誰も知らねえ。
カイト、テン:は?
おっさん:ウチで一番長生きの婆さんが知らねえことだ。お前たちがわかるわけがねえ。
カイト:何だそれ……
おっさん:少なくとも婆さんが生まれた頃には、既にこの島は浮かんでいた。
テン:……じゃあ、最新の魔巧技術とかではないんだ。
おっさん:ウチの空賊団の七不思議のうちの1つだ。
テン:えー、気になる……!




