327話 6月23日#04
そんなことを話しているうちに、いくつかバリアをすり抜けた感覚があった。
――なんだろう、この感覚。何かむにゅっと柔らかいモノを無理やり押し抜けていくような……説明が難しい。
そして、見えてきたのは、とても小さな島だった。木が密集しているところはあるが、人家があるようには見えない。
「これが『ネプトゥヌス島』か?」
「いや、違うと思うよ」と、テンが否定した。「大きな空賊団の根城が存在するほどの大きさではないと思う」
「誰もいないのか?」俺は島の様子を観察した。「攻撃もないし……どうなってんだ?」
そうこうするうちに、島の真上までやって来た。
モルガンは島の平らなところにゆっくりと下りていった。
「んー……」テンは手を額に当てて周囲を見渡した。「何もなさそうだけど……」
「……さっきの飛空艇が戻ってきたら厄介だよな」と、俺は言った。「きっと何かが木が密集してるところにあると思うから、早速行ってみよう!」
――ちなみに、さっきの飛空艇は、海に落ちた仲間を助けることを優先したらしく、反転して俺たちを追ってくることはなかった。
俺たちは、島のあちこちを歩き回った。30分くらいあれば、島全域を見て回れるほどの大きさしかない。
――そして、特に何も見つけられなかった。
「……何もないね」
「『何か』が地中にあるか、それとも……」
俺はそう言いながら、空を仰いだ。
「そもそも、あの空賊たちや飛空艇は、どこから来たんだ?」モルガンには、まだドラゴンの姿のままでいてもらっている。「かように小さな島では、あれだけの数のものを待機させられはしないだろう?」
「なあ、モルガン」俺は空を指さした。「空に向かって、適当に光線吐いてくれねえか?」
「……なかなか挑戦的な頼み事だな」
モルガンは、どういう意味かわからないがそう言った。
でも、俺の指示に従ってくれた。
「『ブレイジングショット』!」
――すると、光線は何かに反射して、俺たちに降り注いだ。
「「ぐわっ!!」」
俺とテンは光線に当たり、数分間ビリビリ痺れて倒れていた。
やがて痺れがとれ、俺たちはゆっくり立ち上がった。
「……あー、びっくりしたー……」
テンが、取り落としていた帽子を拾ってはたいた。
「……どうやら、何かがあるようだな」
モルガンは、俺たちが痺れている間、寝そべってじーっとその姿を眺めているだけだった。
「……そのとおりだけど、少しは俺たちのことを心配してくれ……」
「……人間は、かように弱い生き物なんだな」
「「………………」」
俺はため息をつき、再び空を見上げた。
「さっきの軍艦、戻ってくる気配がねえな」
「うん」テンも、上を見ながら答えた。
「それって、ここへは戻ってこないってことだよな?」
「うん、そうだね」
「……てことは、この島って別に重要な島じゃないってことだよな?」
「うん、だろうね」
「じゃあ……もしかして俺たち、ここへおびき寄せられていて……」嫌な予感がしてきた。「見えてないだけで、実は空賊に囲まれていたりして……」
――結論から言うと、囲まれていた。
俺とテンが地面に伏せると、モルガンがかったるそうに「『セイクリッドドラゴンシュライン』」とつぶやいた。
――そして、全方位から、いろんな魔法と砲弾の嵐が襲ってきた。
どうも、モルガンが使った魔法は魔法盾だったようで、俺たちは「「めっちゃ熱い!!」」だけで済んだ。
そしてモルガン本人は、何を浴びてもケロッとしていた。
――やがて攻撃が止み、俺たちは立ち上がった。
「……やっぱり『何か』あったな」
「……やっぱり『何か』あったね」
それからふと、俺たちと小島を覆っていたバリアが消えた。
――そして俺たちは、数え切れないほど多い大小の飛空軍艦に自分たちが取り囲まれているのを確認した。
「……これ、全部『空賊団』の……?」
「……これからどうするのだ、『脳筋』?」
「……は、はは……」
ふと見ると、飛空軍艦の中でも比較的小さいやつが、俺たちの方へと近づいてきていた。
その飛空軍艦は島のそばまで近寄り、やがてその甲板にいた1頭のドラゴンが、1人の騎手とともに飛び立って小島に近づいてきた。
そして、俺たちの目の前に着陸したドラゴンの背から、大柄で怖い顔をしたおっさんが降りてきた。
「「………………」」
「………………で?」おっさんは、ニヤッと笑った。「何しに来たって言ってたっけ?」
「……『アリエスの石』と『ピスケスの石』を取りに来た」
モルガンは、素直にそう答えた。




