326話 6月23日#03
奇跡的に海へ落下しなかった空賊たちに追いかけられながら、俺は後ろにいるテンに向かって言った。
「お前、過去一で何かすごい魔法使ったな」
「我も、『野菜男』がかような魔法が使えることを知らなかった」
「ふふん!今日の僕は、めっちゃ気合入ってますからね!!」
――これから、どんな魔法を使っていくつもりなんだろう?
心強いような、恐ろしいような……
その時、後ろを飛んでいる空賊たちが銃撃を始めた。だが、どれもモルガンの硬い鱗で弾かれていた。
「……ウザい」
モルガンがそうつぶやいた瞬間、モルガンの体は赤い光の輪に囲まれていた。
「『ループウェイブ』」
光の輪は周囲に解き放たれ、後ろのドラゴンたちも海へと落とされた。
「へえ」テンが、面白そうにふふふと笑った。「後ろにも攻撃できるんだ」
「当たり前だ」モルガンは、ふんと鼻を鳴らした。「我は、馬鹿みたいにブレスしか吐かない種族ではない」
――こちらも、なかなか心強い能力の持ち主だった。
その数分後。
突然、飛空軍艦が前方から現れた。
遠くから見ても、砲台がいくつも用意されているのがわかった。
「モルガン!」俺は叫んだ。「できるだけ急上昇してくれ!!」
「『急上昇』だな!!」
モルガンは突然、体の向きを変えた。ほとんど垂直に飛んで、軍艦の真上を陣取った。
俺とテンは振り落とされないよう、鞍に必死にしがみついた。
だが、モルガンが素早く対応したからか、飛空軍艦はほとんど攻撃しないまま後ろの方へ過ぎ去っていった。
「……あれ?どうしたの?」
「真上に砲弾飛ばしたら、あとで自分たちのところへ落っこちてくるだろ?」俺はテンに解説してやった。「だから基本的に、飛空艇は大砲で真上に攻撃できない」
「では、敵に真上をとられたらどうするんだ?」と、モルガンが訊ねた。
「真上に最強クラスのバリアを張って、攻撃を防いでいる……あと、大型船ならビーム砲を搭載しているやつもある」
「さすが、カイト君♪」テンがウキウキした声を出した。「兵器関係の知識が豊富ぅ♪」
「確かに、『脳筋』とは思えぬよい知識を持っているな」
「……俺を『脳筋』って呼ぶの、止めてもらえません?」
「……僕の『野菜男』ってあだ名も、早く忘れてほしいんだけど」
「………………」
モルガンは、俺とテンの言葉を無視して飛び続けた。




