323話 6月22日#11
その後、俺たちはそれぞれ準備をして、早めに寝ることになった。
出発は明日の早朝。まだ、日が出ていない午前3時頃を予定している。それまでの間、俺たちは学校の会議室で、毛布を借りて仮眠をとる予定だった。
その準備の中で、ソフィアは俺とテンとモルガンをグラウンドへ呼び出した。
「く、鞍!?」俺は仰天した。「でかっ!」
ソフィアが、謎の『知人』から借りてきたドラゴン用の鞍を見せてくれた。その鞍は、主要なパーツは馬用の鞍とほとんど変わらないが、大きさが比較にならないほどデカい。
「……まあ、モルガンは、ドラゴンとしてはかなり大きい部類に入る。大きめのサイズのものを用意したが……体に合うだろうか?」
――そもそも、鞍を取り付ける時点で大変だった。
馬よりはるかに体が大きいので、ソフィアが植物の蔓でモルガンの背中に乗り、俺とテンが両脇で角度の調整をし、ミィが野次馬として俺たちの作業をじっと眺めて、ようやく何とかモルガンの背中に固定できた。
「……手伝ってくれるわけじゃないんだな」
その後、早速俺とテンが鞍に乗る練習を始めた。
俺は一応乗馬ができるので、鐙が5段もあったり、モルガンの背中に『またがる』というより、鞍に座って正座する用な形になっていることに戸惑ったり、『サスペンダー』という、騎乗者を鞍と繋げる革の綱に戸惑ったりしたものの、比較的早く慣れることができた。
――一方のテンは。
「……え?待って?カイト君、随分楽に登ってたけど……う、うおお!いてっ!」
どうやら鐙の使い方に手こずっているようだ。これは、補助をしてあげた方がいいかもしれない。
「……つっても、2、3段くらいは登ってくれないと、俺も手が届かないんだけど」
俺は仕方なく、一度鞍から降りて、登り方をゆっくり説明した。
「まず、鞍のこのあたりのところを持って、鐙に足を引っ掛けて……」
――数分後、何とかテンも1人で上ることに成功した。
「おおー!いい眺めだねー!!」
鞍の座面は波打っていて、4人までが一度に乗れるらしい。腿の力とサスペンダーと、座面の前方にある膨らみを握ることで、体を安定させるようだ。
「熟練のライダーは、ドラゴンに体をひねらせたり、上下逆さまに飛ばせたりできるらしいが、君たちはそんなことしないようにな」
「……言われなくとも、我はそのような幼稚な飛び方はせぬわ!」
「なあ、モルガン」と、俺はモルガンに話しかけた。「鞍つけたけど、違和感とかは何もないか?」
「……正直、何かが背中についている感覚すらない」
――モルガンの鱗、分厚いからな。
「……あとは、翼が引っかからないか確認しよう」
それを聞いて、俺とテンは頭にゴーグルをつけた――『バグボート』に乗るときに使ってたやつだ。
モルガンは、勢いよく翼をはためかせた。グラウンドの砂が舞い上がり、校舎の窓がガタガタ揺れている。
「……すごぉーい!」ミィが歓声を上げた。「3人とも、かっこいぃー!」
「まあ、問題なさそうだな」ソフィアはうんうん頷いた。「夜中の3時に外にいる人は少ない。この街にはバリアは張られてないし、ここから飛び立っても問題ないだろう」
「……じゃ、モルガン。明日はよろしくな」
「一緒に頑張ろうね!」
「言われなくとも、全力は尽くしてやるぞ」
モルガンは、ふんと鼻を鳴らした。
何だかんだで、モルガンはいいヤツです。強くてカッコいい女子。私もとても気に入っています。
カイト君は学校にいた時、初めのうちは馬に乗る気がなかったので『馬術』の授業に身が入らなかったみたいですが、『騎士』のライセンスを取得すると決めて、その条件の1つである『馬術の試験に合格すること』を目指すようになってから、真剣に授業に取り組んだそうです。




