320話 6月22日#08
「問題はもう1つあって」
「……『石』だな」
――今から行くなら、既に盗まれた後ということになるだろう。
「盗んだ人が『石』をどこかに隠すのですが……それがどこかは視えなくて……」
「……ということは、盗むのは『うお座の星霊使い』だな」
ソフィアの言葉に、テンは苦笑いした。
「やっぱりあれだけじゃ、懲りないか」
「実は『石』が重要な理由は、月の神様に関すること以外にも……気絶している3人の星霊使いに石の力を与えると、意識を取り戻すようです」
『……何と!』ピエールペンは白く光った。『それは朗報です!』
「……でも、レイの『石』は、元々どこにあるかわかんねえし、リアとソラの『石』は、盗まれてどこ行くかわかんねえし……どうすんだ?」
俺がそう訊ねると、カヤはしっかりとした目線を俺に向けた。
「実は、『おひつじ座の石』と、『うお座の石』の場所はわかりました」
「……え!?どこ!?」
テンが、突然立ち上がって、食い入るようにカヤの顔を見つめた。
「……『ネプトゥヌス島』です」
――え?
「……それ、どこだよ」ミライは呆れたように手を振った。「確か、地図には載ってないんだろ?」
しかし、カヤはしっかりと答えた。
「『トリトン』から北に『サラキア海』を進んだあたりにあります」
「どうやって見つければいいの!?」
「モルガンさんが行けば、勝手に出てきます」
「……何が?」
「空賊が」
――みんな、固まった。
「『ネプトゥヌス島』には空賊団の根城があって、そこのキャプテンとその右腕の方が、それぞれ『ピスケスの石』と『アリエスの石』を持ってるみたいです」
――いやいや。それ……
「……戦闘必須だよぉ?」
「相手は『ネレイデス空賊団』です。サラキア海沿岸で最大の空賊団です」
「そんなのと戦うのね……」
テンは椅子に座って、はあとため息をついた。
「しかし、なぜ我が出ていくと、その『空賊団』とやらが出てくるんだ?」モルガンは首を傾げた。
「それは、私から説明しよう」と、ソフィアは言った。
みんなが、今度はソフィアの方を向いた。
「空賊団の主な戦力は、『飛空艇』に搭載された各種兵器と、『ドラゴン』なんだ」
「『ドラゴン』!?」
「空賊団の一部の団員は、『竜騎手』の『資格証明』を所持しているか、または以前に所持していた人だ」
――あ、話が見えてきた。
「……その人たちは、できるだけ強いドラゴンを狙っていて……モルガンはその標的になるわけか」
「……そのとおりです」
カヤがそう言うと、モルガンが顔を真っ赤にして怒った。
「我を馬みたいに扱うとは、何様のつもりだ!?」
「空賊とは、そういう連中だ」ソフィアは少し考えた。「だが、裏返せば、モルガンは『強い空賊団でも喉から手が出るほど欲しいドラゴン』ってことになるな」
「見た目も豪華だし、強いし、『レジェンダリ』として希少価値もある……」
「それを逆手に取って島の位置を特定するのが、最良の手のようです」
「……ねえ、モルガンさん」まだ怒って震えているモルガンに、テンが話しかけた。「それってつまり、モルガンさんは『すごいドラゴン』だって認められるってことじゃない?」
「……ま、まあ、そういうことだろうな……」
モルガンは、ようやく冷静さを取り戻した。
「我は『すごいドラゴン』だ」
「……あとはネプトゥヌス島へ侵入し、何とか『石』を入手するだけです」
「ハードルは高いが……やれないことはないな」
どこに隠されるかわからないリアとソラの『石』に比べると、場所がわかるだけやりやすいかもしれない。
レイに関しては、光明が見えてきたかもしれない。




