319話 6月22日#07
『……まあ、最初に『呪い』にかかった衝撃で、御三方は気絶しましたし、『呪い』にカウンターをかけたことで、ワタクシの存在が確実にバレちゃったんですけど』
――とはいえ、テンが少し明るい顔をしていた。
「……じゃあ、レイさんたち……まだ生きてるんだ……!」
「……湖に落ちたのにぃ?」
ミィの言葉で、テンがまた落ち込んだ。
『……あ、その点は……えーっと。ちょっと待っててくださいね……』
ピエールペンが緑色に光って、何か考え込んでいる。
数秒後。
『……あ。湖にはいないみたいですね』
「え?」
『つまり、誰かが引き揚げました』
「え?」
『しかも、ワタクシの『慈悲』の効果がまだ継続してますので、生きてる可能性は高いです』
「「「……ええええ!?」」」
「ほんとーー!?」テンが、嬉しそうに飛び上がった。
『ええ!』ピエールペンは、ピンク色に光った。『あの魔法、ワタクシの加護ですから、湖に落ちても死ななかったんです!たぶん!』
「わー!やったーー!!嬉しいーーー!!!」
そして、テンは目尻を袖で拭いていた。
「また、レイさんと生きて会えるかも……そう思っただけなのに……わあぁ!涙がぁ……!!」
「……テンション上がると、うるさい奴だな」ミライは呆れて首を振った。
「よかったな」ソフィアはテンの腕を優しく叩いた。
「……貴様、地味にやるではないか」
モルガンからの褒め言葉に、ピエールペンは、今度はオレンジ色に光った。
『すごいでしょう?これでもワタクシ、神ですから!……これからもみなさん全員を、この命に代えても守りきってみせます!!』
――と、言い切った後、
『……あ。長生きしてるワタクシが言っても、全然説得力がありませんね』
「そんなこと、どうでもいいだろ」
「……でも、一体誰が、どこへ持っていってしまったんでしょうか?」
カヤが首を傾げると、ピエールペンが軽くふるふる震えた。
『その疑問の答えを得るには、カヤさんの『未来予知』が使えます』
「で、ですが……」カヤは困ったような顔をした。「わたくし、彼女たちのことは全然わからなくて……」
『ご心配なく!……まず、テンさん。ワタクシをカヤさんに渡してください』
「……了解です!」
テンは立ち上がってカヤの元へ行き、丁寧にピエールペンを渡した。
『では、ちょっとした魔法をかけますよ……『エンパワーメント』!』
ピエールペンが明るい白色に光り、明るすぎてみんな目を瞑った。
やがて光が消えると、カヤが目を大きく見開いて、何もない長テーブルの真上を見つめた。
「『ふたご座の星霊』、『さそり座の星霊』、『みずがめ座の星霊』……まさか……そういう未来も……なるほど……」
カヤが、何かをボソボソつぶやいている。
やがて、カヤは目を閉じた。
『何か視えたようですね』
「……ええ」カヤはじっと動かなかった。「どうやら彼女たちを救うのに……わたくしたち全員の協力が欠かせないようです」
「「「協力……」」」
カヤは、ゆっくり目を開いた。
「……まず、3人の体の場所についてですが……敵の3人、ゲミニ、スコルピウス、アクアリウスの実家にあります。つまり……」
「『星霊界』にあるってことか」
ソフィアの言葉に、カヤは頷いた。
「彼らはそうやって、レイさんたち3人の保護者である星霊を、自分たちの実家に呼び寄せようとしています」
「……何で?」
「星霊の注意を逸らすためです」
「どゆこと?」
「星霊たちは、自分の育てた星霊使いを守るために、敵の家に行くのですが、当然そこには敵の星霊がいますので、必然的に星霊同士の戦いが始まります……」
「そういえば星霊同士って、そんなに仲良くないんだよね?」
テンの言葉に、カヤは頷いた。
「ええ……で、その間に、3人が家の中にしまっていた『石』を盗むつもりのようです」
『「「「えええ!?」」」』
――盗む!?
確かに、星霊使いたちの『収納』の場所は、『星霊の家』の一室だと言っていたが……
「……それに、星霊が戦って傷つき、力が弱まると、その星霊使いも力を失います。3人の星霊使いを完全に無力化することも目的のようです」
「……で、どうすればいい?」
カヤの顔は、深刻そうだ。
「今言ったことは、既に始まっているようです。一刻も早く、星霊使いたちの体を回収する必要があります」
「……そうか」ソフィアはこくんと頷きながら、また紙に何かを書きつけていた。
「……それは?」
「今回は、会議のメモを取っている」
ソフィアはそう言って、隣に座っているテンに紙を見せた。
テンが頷いて納得したようなので、ソフィアが少し安心した顔をしていた。ちょっと珍しい光景だった。




