314話 6月22日#02〜カイトの夢〜
朝食を食べ終えた後、俺たちは少人数のグループに分かれて行動した。
俺は、テンと一緒に街を散歩していた。思えば、今までテンと二人っきりでいた事は、ほとんどなかった――ので、何話したらいいのかわからん。
「そういえば、カイト君、」
テンが急に話しかけてきた。
「君……何でそんなにストイックなの?」
「す、『ストイック』?」俺は、思わずテンの顔を見た。
「だって、君は僕みたいに森でフラフラしてないでしょ?僕みたいに人には言えない過去があるわけじゃないし、僕みたいにかわいい子に熱を上げることもないし……」
テンは、ため息をついた。
「僕も親類がいない身だから、孤児院に預けてもらえてたら、もっと真っ当な人間に育ったのかな……?」
「それは……人によると思うが」
俺は、空を見上げた。
「もし、テンから見て俺が『ストイック』に見えるなら、それは俺が今の仕事を好きでやってるからじゃねえかな?」
「……君、闘技場で戦うの、好きなの?」
「……ああ。だから強くなりたいと思ってる」
――そこで俺は、「ああ」と心の中で納得した。
「俺、別にあのマネージャーの嫌味が嫌だから、強くなろうとしてるわけじゃねえよ」
「そうなの?」
「ああ。闘技士の中には、他に選択肢がなくて、仕方なくやってる奴もいるが、俺はそういうわけじゃない」
「……君、わざわざ戦うためにグラディアトルやってるんだ」
「ああ、そうだな」
「いつからなろうと思ってたの?」
「うーん……10歳くらいの時かなあ?」
俺は、昔のことを思い出していた。
「本当は『魔術師になりたい』って思ってて……まあ知ってのとおり、俺は全く魔法が使えなかったんだけど」
そのことで他の孤児たちにいじられたのは、嫌な記憶として残っている。
「……だから、他のみんなが魔法を覚えようと必死になってる時間に、俺は何もすることがなくてな」
――そんな時、たまたま祭りのイベントの催しで、2人のグラディアトルが試合をしているのを見た。
「……その時は、2人とも魔法を使わないで戦ってたんだ」
魔法みたいに、派手な現象が起こるわけではない。
でも、その人たちの試合は、とても見応えのあるものだった。
「……で、試合の後に直接本人に訊いてみたら、片方の人も俺と同じで、全く魔法が使えないと言ってて」
――だけど、負い目など微塵も感じさせない戦い方をしていた。
「その時ようやく気づいたんだ。魔法なんか使えなくたって、どうにでもなるんだなって」
それから、目指すものが変わった。
――『魔法以外で、自分の得意分野を探す』
「……で、見つけたのが、『剣』でグラディアトルをやることだった」
――まあ。小さい頃からわりと喧嘩っ早い性格だったし。
「今の品行方正なカイト君からは、想像もつかないけど」
「実戦の中で冷静さを身につけたからな」
最近は、戦闘になっても頭に血が上らなくなった。
試合の結果に、くよくよすることもなくなった。
ただ、目標に向かって、淡々とやるべきことを積んでいくだけ……
「……あ。今の俺、結構ストイックだな」
「ちなみに、その目標って?」
「大会で優勝して、成績上位にランクインする」
「へえ」テンは目を細めた。「ホントにストイック」
「ああ。やっぱり好きなことをするのって、いいことだと思う……ああ、それと、」
俺は、重要なことを付け加えた。
「……好きな人がいないのは、まだそういう人に出会ってないからだと思うぞ」
テンは「へえ。そーなんだー」とニヤニヤ笑っていた。




