313話 6月22日#01
次の日。
俺たちは全員揃って、大衆食堂で朝食をとっていた。
俺は、昨日の対ミィ戦を思い出していた。
「……あんな武器、ありかよ?」
ミィの1トンのハンマーの破壊力は、レイの大剣の比ではなかった。1発でも当たったら、即死。
「いや、待て!そんな武器持ってる闘技士なんていねえから!」
――というわけで、100キロのハンマーに持ち替えてもらった。
100キロだって十分重いのだが、ミィは紙でできた槌のように楽々振り回して攻撃してきた。
ハンマーの最大の特徴は、『上から振り下ろすと、破壊力抜群』なところ。
つまり、相手に上を取られたら、負けになる。
水平方向の振り回しも、相手に近づけないので厄介だが、やはり100キロを脳天にぶち当てられるわけにはいかない。
俺は攻撃を左右に避けながら、主に相手の後方を狙って立ち回った。
俺が戦っている間に、ソフィアがこんなことを言ったらしい。
「……なるほど、戦術を変えられるのか……これで闘技士として名を挙げられぬとは、なかなか厳しい世界なのだな……」
結局この試合は、ミィの真後ろを取った俺が剣でミィの頭を叩いて、俺の勝ちとなった。
――で、その後。
「悔しいから、もう1回戦わせて!!」
なぜか、ミィとの2回戦目が始まった。
今度は、ミィが軽めの魔法を使っていいことになった。
「……いや。これのどこが『軽め』なんだ……」
ミィがハンマーで地面を叩くと、地割れが発生した。
ミィがハンマーを宙で振ると、砂嵐が発生した。
そしてミィがハンマーを地面に突き立てると、
「うぐぐぐ……!」
――俺は、泥沼の中で動けなくなっていた。
この後はもちろん、簡単に脳天に1発喰らい、試合終了となった。
そしてこの時は、ソフィアはこんなことをつぶやいていたそうだ。
「……魔法を喰らうと、めっちゃ弱いんだな」
――ハイ、そうです……
「……何か昨日の様子見てたけど、ミィちゃんの攻撃って『地面』と関係のあるやつが多いみたいだね」
「そうよぅ」ミィは不機嫌そうに頬を膨らませた。「あと、『ちゃん』付けは止めて」
「……ごめんなさい、ミィさん」テンはそう言って、下を向いた。
「『地面』ってことは、空へ逃げれば避けられるんだが……」俺は、テーブルに片肘をついた。「レイみたいに飛べるわけでもないし……」
「……確かに、人間には攻略が難しいかもしれんな」
――昨日気づいたが、モルガンは卵が好きらしい。今朝も、スクランブルエッグを上機嫌に食べていた。
「……思えば、ハンマーとの相性もかなりよさそうだな」と、ソフィアは上品に紅茶を飲んでいた。「容易には近づけぬ武器と、遠距離にいると避けにくい魔法を使う……」
「ただ、ハンマーはどうしても大振りになる」と、俺は今までの記憶をたどって言った。「だから、魔法さえどうにかすれば、小回りの利く俺の方に分があると思うんだが」
俺の剣の刃渡りは50センチ強。斬るのも刺すのも楽にできるし、持ち運びもしやすい。
一応もっと長い剣も扱えはするが、あんまり俺向きじゃないなあ、という感想を持っている。重いくせに柄が短いので、想像以上に扱いにくい――てか、馬に乗らず、レイみたいに魔法で剣を振り回す戦い方をしないなら、そんな武器使わない方がいいと思っている。
「うーん、そうだねー」テンは、いつものように甘いコーヒーを飲んでいた。「普通に魔法陣使う魔法でも、地面系は足元にいきなり魔法陣が現れるような感じだからねー」
「ちなみにテンは、地面の魔法って何使える?」
「……『落とし穴』くらい?」
「この前使ったあれか」
「一応、走り回ったら避けられるって話はあるんだけどぉ……ずっと走るわけにもいかないわよねぇ?」
ミィはそう言って、首を傾げた。
「走り回っても、当たるときは当たるし……難しいね」
「……なるほど、こうやってみんなで考えていくんですね」
カヤは興味深そうに頷いた。
「そうそう!試合をするって考えたのは、僕ですー!」
テンは元気よく手を挙げた。
「……機嫌、治ったんだな」
ミライがぼそっと言うと、
「うん、そうだよー!……あ、でも昨日言ったことは本気だからねー!」
……と、テンは言った。
「笑顔で言われると、それはそれで怖いんだけど……」
ミィの言葉に、俺は思わず頷いた。




