310話 6月21日#07
気がついたら、空の旅は終わっていた。
午後4時頃。俺たちはセメレまであと数キロというところまでやって来ていた。
モルガンは低空飛行をし、かごを地面に下ろした。
「これ以上、この姿で街へ突撃すると、確実に軍に攻撃される。あとは自分の足で歩け」
「『歩け』って、モルガンも一緒に行くんだろ?」俺はかごから下りながら言った。
「……まあ、そうだが」
――でないと、街のどこへ行けばいいのか、俺たちにはわからない。
モルガンは金色の光に包まれた。
そして現れたのは、見慣れた人の姿の『モルガン』だった。金色なのは髪だけで、服装は相変わらず真っ黒だ。
「……服は金色じゃないんだな」
「そんな目立つ服、着るわけがないだろう?」モルガンは頬を膨らませた。
俺たちは笑いながら、ゆっくりと歩き出した。
――1時間ほど経って。
俺たちは無事、セメレにたどり着いた。
「とりあえず、ウィルゴの居場所まで連れてってやる」と、モルガンは言った。「ま、どうせすぐ飯食いに外へ出ることになるだろうが」
そういえば、俺たちも昼食を抜いているので、かなり腹が減っていた。
「それにしても、」と、テンはつぶやいた。「ソフィアさん、だいぶ忙しい人じゃなかったっけ?こんなところまで来てていいの?」
――確かに、ヴィクトリアの学校からかなり離れているが、大丈夫なのだろうか?
「知るか。気になるなら、直接本人に訊け」
――そしてその学校が、ここセメレにもあった。
「待っていたぞ」ソフィアは校門の前で待っていた。「こっちに来てくれ。会議室でみんなが待っている」
ソフィアは相変わらずの美人で、相変わらず近寄りがたい感じがした。
だが、気配りができない人ではなかった。
『会議室』へ行く途中、廊下を歩きながら労ってくれた。
「昨日は大変だったな。よく頑張った」
「ええ。確かにそうですね」
「疲れただろう?この街で少し休憩するといい」
「「「ありがとうございます!」」」
テンとカヤと一緒に礼を言ったところで、ソフィアは目の前にある扉をノックした。
「失礼する」
中には、大きな長テーブルの両端に2人の人がいた。
「……なぜ、そんな離れたところにいる?」
「……その女、うるさい」
こちらに近い方の椅子に座っている男性――『やぎ座の星霊使い』のミライ――は、テーブルに肘をついてふてくされていた。
「だってぇ、ミライってば、色々話しかけてあげてるのに、全然反応してくれないのぉ!」
奥の方の席に座っているのは、今まで見たことのない女性だった。
薄いレモン色の髪に映える緑色のリボンの髪飾りを2つつけていて、服は、下半身はここからでは見えないが、白いブラウスと緑のボレロを着ていた。
目はこげ茶色。ミライの髪の色に似ている。
「話すことは何もない。口を閉じてろ」ミライはふんと鼻を鳴らした。
「……ともかく、好きな場所へ座ってくれ」
ソフィアはそう言うと、奥の給湯器のあるところで、お茶の用意を始めた。
「ねえ」テンはモルガンに訊ねた。「彼と彼女のこと、紹介してくれないかな?」
「こっちの黒髪がカプリコルヌス。あっちの黄色髪がタウルス」
「初めましてぇ~」女性がこちらに近づいてきた。「あたし、おうし座の星霊使いのミィです!よろしくぅ~」
「初めまして」テンは丁寧にお辞儀をした。「僕、テンっていいます」
「俺はカイト」
「わたくしはカヤと申します。お会いするのは初めてですね」
「確かに。『会議』では話したことがあったんだけどねぇ」
ミィは、俺たち3人と順番に握手をしてから、ミライに向かって文句を言った。
「ほら、あんたも挨拶しなよぉ!」
「ふん。ミライだ」
ミライはそれだけ言って、後ろを向いてしまった。
このミィの登場で、12人の星霊使い全員が揃いました。とても個性的な人たちです。




