308話 6月21日#05
モルガンが立ち退いた後、俺は岩穴の外へ出て、改めてモルガンの姿を観察した。
赤い目と黒い尾の先が特徴で、他の部分は完全に金色の鱗で覆われていた。
4本の脚はがっしりしていて、その先についている爪は長く、岩にも食い込んでいた。翼は太い骨と黒い被膜でできており、とても大きい。軽く羽ばたくだけで大風を起こすほどだった。
大きさは、背中に大人3人+αが十分乗れるくらい――あ、でも鱗がかなりつるつるしている。直接乗ったら、下へ転げ落ちそう。
「おお!『レジェンダリ』って、前に見た変なドラゴンと違ってめっちゃかっこいいんだな!」
「あの『教団の幹部』ね。あれ、酷かったね!」
「その後も『キングヴェノムドラゴン』とか見たけど、モルガンはもっとデカいし、本物の『ドラゴン』って感じがする!」
「モルガンさんの不遜な言い方に、ぴったりだよね!」
「なあ、『触るな』なんて言うなよ。少しくらい鱗触ってもいいだろ?」
「ね、ね!写真撮っていい?50枚くらい!」
「………………」モルガンは呆れているらしく、騒いでいる俺とテンを無視して、その場に座った。
「モルガンさん」カヤは、手に月の神を持って、モルガンに近づいた。「今ここにいるのは、わたくしたち3人と、この月の神様だけです」
「……そうか」
「これからわたくしたちは、どこかへ移動するのでしょうか?」
「……そうだな」モルガンは、頭を前足の上に置いた。「おとめ座の星霊使いに、貴様らを『セメレ』という街まで送り届けることを、無理やりやらされている」
「『セメレ』には、ウィルゴさん以外にも誰かいらっしゃるんですか?」
「ああ……『やぎ座の星霊使い』と、『おうし座の星霊使い』が一緒にいる」
「……『おうし座』?」俺ははっとした。
「……どうしたの?」
「俺、太陽星座が『おうし座』なんだ!」
「……おお!」テンは両手を上げて喜んだ。「もしかしたら、君も2つ『石』を揃えられるかも!?」
「よかったですね」カヤは微笑んでいた。
「……まあいい」モルガンはだるそうに首を横にした。「我は少し疲れている。ここで1時間くらい休ませてもらう」
「ごゆっくりどうぞ」
その1時間後。
俺たちは『セメレ』に向かって出発することになった。
「『セメレ』まではどうやって行くんだ?」
俺がそう訊ねると、モルガンは岩の上に置いてあった大きな木のかごを見せた。
「我が人など乗っけられないと言ったら、ウィルゴがこのかごに入れたらいいと、我に持たせた」
――確かに、大人3人+αが十分入れる大きさだが……もともと何のかごだったんだろう……?
「よくわからんが、『玉入れ』とかいうやつをするときに使うらしい」
「……こんなデカいかごで『玉入れ』……?」
――余計に、よくわからなくなった。
「……まあいい」モルガンは、興味なさそうだった。「とにかく我の翼なら、5、6時間もあれば着く」
「『セメレ』って、わりと近いの?」
「貴様らと初めて出会った『トリトン』に近い」
「え?結構遠くね?」
「我の飛翔能力を甘く見るな」
俺とテンは、互いに顔を見合わせた。
「……前に「そんなに飛行能力は高くない」って、自分で言ってなかったっけ?」
「言ってない」
「いや、言ってた!」
「言ってない!」
「……あ。もしかして『黄金の林檎』の力で、飛翔能力が向上した……?」
「何でもいいだろ」モルガンは、前足でかごを指さした。「早く乗れ。置いてくぞ」




