307話 6月21日#04
午前11時を過ぎた。
疲れていた俺は、毛布の上に座ったままウトウトしていたし、カヤとテンは、相変わらず同じ格好で同じことをしていた。
――その時、
「ズウウウ……ン……」
何か鈍い音と振動が発生した。
「何だ……!?」
俺は起き上がって、脇に置いてあった弓矢と剣を手に取った。
テンも縫っていたものを置いて、銃を取り出した。
「何か大きなものが、この岩の上に落ちてきた……気がする……」
――大丈夫なのだろうか。岩穴が崩壊することはないのだろうか?
しばらく固まっていると、突然入り口が何かに塞がれた。
何かはわからないが、陽の光を反射して、真ん中あたりが赤く光っていた。
やがて、それが視界から消えた。
直後、頭上の岩から、小石や砂が落ちてきた。
「何かいるね」
――そう。これは生き物だ。
「……しかも、かなりでかいな」
突然、「ズシン」という音と共に、岩の隙間の外に何かの大きな脚のようなものが現れた。太い。
脚は、金色の鱗で覆われていた。
その脚が消えると、「ズシン」とまた別の脚が現れた。今度は、たぶん後ろ足だ。
やがてその生物はこちらを振り向いた。再び光が遮られ、赤い光だけが真ん中に浮かんでいる。
「これ……」俺はじっと目に映っているものを見続けた。「もしかして……」
「ドラゴン……だね……」テンも俺の隣で、固まって動けなくなっている。
「しかも、めっちゃでかい……」
「何か、めっちゃこっちを見てるけど……」
――俺たち、危なくね?
と、思った瞬間、
「何だ?せっかく我が迎えに来てやったというのに、挨拶も感謝もしないつもりか?」
一瞬、脳がフリーズした。
今しゃべったのは、俺たちではない。カヤでもない。
そして、岩の前にドラゴンがいる。
――しかも今の口調、何か聞き覚えがある。
しばしの間が空いた後、脳内のパズルのピースがカチッと嵌った。
「「あーー!!」」俺とテンが、同時に叫んだ。「「モルガン!!」」
「そうだ。我だ」ドラゴン――というかモルガンは、ふんと顔を逸らした。「貴様ら、我のことを忘れていたのか?」
「忘れてたんじゃねえよ!てか、そもそも『ドラゴンの姿』なんか見たことなかったし!」
「元気でいたんだね!てか、本当の力、取り戻せてたんだね!!」
「……そうだ。叫ばなくても、我にはちゃんと聞こえてるぞ」
モルガンは心底めんどくさそうにしていたが、俺たちは彼女の態度に構わず大喜びしていた。
「へえ、金色の鱗なんだ。めっちゃかっこいいな!」
「確かに、本来の姿がこんなだったら、早くこの姿を取り戻したいって思うだろうね!」
「いやー!『助け』が来るって言うから、どんな『助け』なのかと思っていたら!」
「随分心強い『助け』が来たね!」
「にしても、ホント無事で良かった!」
「ね!また会えて嬉しいよ!」
「黙れ、貴様ら」モルガンは俺たちを鋭く睨みつけた。「まったく。うるさいのは変わってないのだな」
「よく来てくださいました、モルガンさん」カヤが俺たちの前へ出てきた。「わたくしは『かに座の星霊使い』のカヤと申します。このように、わたくしたちを助けに来ていただき、本当にありがとうございます」
「……なかなかよい言葉を言うな、貴様」
モルガンは、再び俺たちに目を向けた。
「貴様らもカンケルを見習ったらどうだ?」
「おう、そうだな!」俺は、モルガンの頬をぺちっと叩いた。「よく来てくれた、サンキュー!」
「僕も感謝しているよ!」テンも、モルガンの反対側の頬をぺちぺち叩いた。「ありがとう!嬉しいよ!」
「……他竜の頬を勝手に触るな!」
俺たちが何を言っても、モルガンは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
――でも、久しぶりの再会は、嬉しいものだ。
俺もテンも、悩みを忘れて興奮していた。
このモルガンが迎えに来るシーンは、トップ3に入るほど私の好きな場面です。モルガンは、『めっちゃかっこいい』ドラゴンです。私も直接会ってみたいです。




