305話 6月21日#02
食事を終えると、俺はストレッチで体をゆっくり動かした。こわばっていた体が、少しずつ動くようになってきた。
一方テンは、まず銃の手入れをして、それが終わると、今度は裁縫道具を取り出して、何やら布を縫い始めた――たぶん今は、何も考えたくないんだろうな。
カヤは、月の神を膝の上に乗せたまま、目を瞑って何かを考え込んでいた。もしかしたら、未来の情報について整理しているのかもしれない。
しばらくそうやって3人で黙りこくっていると、遠くから人の声がかすかに聞こえてきた。
「……このあたりにいるはずです」
「探せ!絶対に奴らを捕まえろ!」
「……来ましたね」
カヤは目を開けて、岩の隙間を見つめた。
「……少し暗くなりますが、我慢してください」
カヤは盾を取り出すと、「『リフレクション』」とつぶやいた。
――すると、盾の表面が鏡のようにツルツルになり、あたりの様子をきれいに映しとっていた。
カヤはその表面を外に、岩の隙間を塞ぐようにして置いた。
やがて聞こえてきた人の声が、だんだんこちらに近づいてきた。足音から、どうやら複数人が一緒に行動しているようだ。
「……ホントにこのあたりにいるんだろうな?」
「間違いありません」
「『占い師』の言うことなんか、どうせどれもテキトーだろ」
「……こっちは、何もありません!」
「……ほら!」
「ま、まだいないと確定したわけでは……」
「そもそもあれだけの戦いで誰かが生き残ってるって、常識的に考えられるか?」
「いえ、絶対にいます!」
「……そんなん信じられるか」
「ユスティティアの占い師として、嘘は絶対言いません!」
「……だって。『占い師』はウソをつかないらしいぞ」
「ははは!じゃあ、『頑張って』それを証明してやるか!」
「もう!とにかく、早く探してください!でないと……!」
何か言い合いをしながら探しているようだ。
カヤは俺たちの方を向くと、小さな声で囁いた。
「あの人たちは、お金で雇われた『占い師』と『兵士』です。あなた方がディアナへ来る前にここへたどり着き、いろいろ工作していたようです」
「『工作』……」
「主に街のバリアを壊してモンスターを呼び寄せ、さらに飛空艇を街へ侵入できるようにするために準備をしていました」
「『街のバリア』って、そういえば今どうなってるの?」
「ええ。あの星霊使いの3人がまだ『塔』に来る前に、『魔力発動装置』の再起動をしてくださったので、今は正常に動いているはずです」
その時、兵士たちが近づいてくる音がしたので、俺たちは話すのを止めた。
じーっと息をひそめていると、兵士はちょうど俺たちの隠れている岩の隙間を調べていた。
――だが、特に何かが見えたわけではなかったらしい。そのまま別の岩の隙間の方へ移動した。
「……やっぱ、いねえじゃん」
「ホント、役に立たないやつだな」
「……また、飛空艇の地下に縛り付けようか?」
「いや!本当にいるはずなんです!」
「占い師なんて、アテにするもんじゃないな!」
「まだ探して30分も経ってないじゃないですか!もっとしっかり探して……!」
「うるさい。殴られたいか」
「…………!」
やがて、占い師と兵士たちはその場を去っていった。
遠のいていく足音を聞いた俺たちは、ほっと安堵の息を吐いた。




