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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
ディアナ編

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300/367

300話 6月20日#33

 「……伏せて!!」



 聞き慣れない女性の声が聞こえてきた。俺はわけもわからず、言われたとおりに伏せた。


 そして、



 ――ズドーーーン!!!



 頭の上に、何か大きな圧力を感じた。



 「ううう……!!」



 見上げると、先ほど俺の近くで倒れていた女性がかなり大きな盾を上に掲げて、俺たちを何かの魔法から守っていた。盾は銀色で、随分分厚い。


 俺は立ち上がり、女性の盾を一緒に支えることにした。



 やがて圧力は止まり、盾が軽くなった。


 女性はこちらを見て、疲れた顔を動かし柔らかく微笑んだ。



 「助かりました。ありがとうございます」


 「もしかして、あんた……」



 突然「ズン」と、『塔』が嫌な揺れ方をした。何だか床が傾いているような……!?



 「早く!わたくしの盾に乗って!!」



 女性は盾を裏返しに床に置き、俺に合図を送った。



 「え?あ……ああ!」



 俺は月の神を抱えると、一瞬他の3人の様子を見た。



 ――だが、そのうちの誰かを助けていたら、月の神を抱えている俺が助からない。



 俺は諦めて、月の神だけ抱えて盾に乗った。



 「『ウォータージェット』!」



 ――何と、盾の側面から水が噴き出て、『塔』から一気に飛び出していった。



 そして、



 「『スプリングショット』!」



 女性がそう叫ぶと、盾の真下の『湖』の中から、勢いよく水が噴き出てきた。


 水はゆっくりと噴き出る量が減っていき、やがて俺たちの乗った盾は『湖』にぽちゃんと落ちた。






 よく考えると不思議な話だが、俺たちは盾に乗って、無事『湖』を渡りきった。


 俺は後ろを振り返った。『塔』はガラガラと完全に崩れ、もう壊れる前の姿も残してなかった。



 「………………」


 「…………あ、あの……」


 「……あんた、カヤさんだな?」


 「え、ええ。カヤと呼んでください」



 女性はゴツい盾の持ち主なのに、見た目がめっちゃ可憐で儚い。



 「……こうなる未来を予想していたのか?」


 「……え、ええ。申しわけありません」カヤは目を伏せた。「あの3人のうち、1人でも助かる未来の先は、どれもよい結果ではありませんでした」


 「……そうか……」



 俺は、手の中にいる『幼虫』を見つめた。今まで見たことがないほど、大きさが小さくなっている。



 「……とりあえず、ここも危険です」カヤは、ある方向を指さした。「あちらの方角に、山があります。元々山賊がいた場所で、いくつか人が隠れ住める岩穴があります」


 「そっちへ行くのか」俺は周囲を見渡した。「テンはどこ行った?」


 「テンさんは、もうすぐここに来ます……あ、あそこです!」



 ――と、言われても、暗くてよく見えない。



 でも、じーっと見つめていると、確かにそこに人がいる様子が見えた。



 「おーい!テーン!!」



 大声で呼びかけてみたら、人影が反応した。こちらへ走り寄ってくる。



 ――やがて俺たちの前に現れたのは、やはりテンだった。



 テンは、俺たちの様子を見ると何か察したらしく、一呼吸おいてから言った。



 「……『塔』が崩れたのは、そういうこと?」


 「ああ。ドゥファンがいて……」俺は下を向いた。「他の3人を助ける余裕がなかった」


 「……そう……」



 テンは、本当に寂しそうな顔で、『塔』のあった方向を見つめた。



 それから、こちらに目を戻し、カヤの顔を見つめた。



 「……君は?」


 「カヤと申します。『かに座の星霊使い(カンケル)』です」


 「そうか、君が……」



 テンはふうとため息をつくと、カヤに優しく訊ねた。



 「……これからどこへ行ったらいいの?」


 「あちらにある、山賊の隠れ住んでいた場所です」カヤは歩き始めた。「山賊が住んでいたのはかなり昔の話なんですが、いくつかまだ使える穴があるので、そこで休みましょう」



 カヤが言うには、早めに歩けば問題なく目的の『岩穴』にたどり着けるらしい。


 俺たちは、言葉少なく、北部の山を目指して歩き始めた。

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