299話 6月20日#32
『塔』の中へ入ったものの、暗くて何も見えなかった。
テンから借りてた電池式のライトで足元を照らしながら進んでいく。
「確か、どこかに自動昇降機が……」
見つけたので、試しにスイッチを押してみたが、動く気配がない。
「……だろうな」
『水の落下』を利用しているという話だったが、今、この『塔』の中は水がほとんどなくなっていた。
仕方なく、俺は『塔』の階段を上っていった。
「暗いし滑るし……思ってた以上に上りにくいな……」
駆け上がった方がいいのだろうか……?と不安に思いつつ歩いて上っていった。
――それからしばらくたち、突然塔がドスンと揺れた。
「え……?」
見たところ『塔』は石を積んでできているので、あまり衝撃が大きいと、もしかしたら崩れるかもしれない。
俺は階段を上るスピードを上げた。
――ドスン。ドスン。
何度も振動があり、その度に頭の上から砂や小石が落ちてくる。
「上で、誰かが戦ってんのかな……?」
たぶん、レイ、リア、ソラの3人は、もう上の階に集合している。
それにカヤもいて、戦いが長引いているということは……
「相手はドゥファンか……」
どんな魔法を使うのか知らないが、絶対に強いはずだ。
「何とか間に合えばいいが……」
それから数分たち、体力というより気力との勝負になり始めた時、
「「「きゃああああ!!」」」
悲鳴が聞こえた。
「……マジか!!」
――俺は、今駆け上らなければならないと、直感的にわかった。
足を踏み外さないように、と祈りつつ、できるだけ早く階段を上っていった。
――そして、拍子抜けするほど早く、『塔』の一番上までたどり着いた。
「……思ってたより低い塔だったのか……?」
それより問題は、
「あれは……ドゥファン!!」
空中にいて、足元の瓦礫の様子を見つめている。
「『ターミネート』」
『ワタクシが、みなさんを守ります!』
ピエール33世の声が聞こえてきた。
見ると、瓦礫の合間から外へ飛び出していた。
――これは、援護する必要があるな。
俺のすぐ近くにいる女性の体が(たぶん)ドゥファンの魔法で浮き上がっていたので、俺はその女性の体を自分の方へ引き寄せた。
『『慈悲』!!』
「『サンダーショット:ハスタ』!!」
ピエール33世の声と、どこかから聞こえたリアの声が同時に聞こえてきた。
「……よし!」
ドゥファンはその2つの魔法に気を取られているようだ。俺は弓に矢をつがえ、ドゥファンの胸めがけて矢を放った。
「ぐはっ!」
矢はドゥファンの肩に命中した。ドゥファンは空中で、ひどく苦しそうに悶えていた。
俺はようやく、その部屋の様子を見る余裕ができた。
部屋は瓦礫だらけで、元々何があったのかよくわからなくなっていた。その瓦礫の隙間で、火がちょろちょろとくすぶっていた。
その瓦礫の上に、レイ、リア、ソラ、あともう1人、さっきの女性が倒れている。
「……嘘だろ……!」
俺は上を見上げた。
ドゥファンは肩の矢を抜いて放り投げ、
「……一歩遅かったな」
ドゥファンは俺に向かってそう言うと、肩を手で押さえながら、暗闇の中へ消えていった。
『みなさんのことは……このワタクシが……』
――ぽんっ!
ピエール33世が『幼虫』の姿に戻り、瓦礫の上に落ちるのを見た。
「月の神!」
俺は飛び出して、瓦礫に横たわる『幼虫』を持ち上げた。神様だから死んではいないとは思うが、ピクリとも動かない。
――そして、他のみんなも……




