297話 6月20日#30〜塔の上の決戦②〜
これは……かなりマズいですね……
レイさんたちがいろんな魔法でドゥファンを攻撃していますが、どれもほとんど効いていません。
――しかも、
「『プロミス』」
――この魔法が厄介で……
ワタクシが観察したところによると、どうやら『文字』が合体してできた『文字列』は、意味のある『単語』らしく――その『単語』によってどんな魔法が発動するかが違うようなんです。
「はうう…………!!」
――ほら。今度は槍みたいな何かが上から降ってきました。
みなさん傷だらけで、体のあちこちから出血しています。
『うう……!』
――ワタクシ、こんなところに隠れてていいのでしょうか?
「『サンダーショット:フルメン』!」
リアさんの攻撃は、手で払いのけられただけで終わりました。
「……はあああ!!」
ソラさんの渾身の蹴りも、難なくかわされました。
「『クリムゾンピアシングブレス』!!」
レイさんの魔法が一番効いているみたいなんですが、服がちょっと焦げているだけなので、体はノーダメージの可能性があります。
「『プロミス』」
再び、緑の『文字』が周囲をぐるぐる回ります。
そして10個の魔法陣が、みなさんを取り囲みます。
魔法陣から、炎が噴き出てきました。
――でも、レイさんはあきらめていませんでした。
魔法陣の火はどんどん消えていき、代わりにレイさんの目の前に、大きな火の球が現れました。
「カウンター……『イグニスフィア』!!」
――レイさんのカウンター技が炸裂!!!
「……我ながら、随分手ぬるい魔法で遊んでいたな」
――なのにドゥファンは無傷……
「……そろそろ終わりにするか」
緑の文字が、レイさんたちの周りを回ります――今度は何を……!?
「『ターミネート』」
――魔法の名前が変わりました。
『文字』は何か『単語』を作ります。今回は長いです。8文字くらいあります。
そして、空に大きな魔法陣が現れました。『塔』に被さっているようにも見えます。
ワタクシは見ていられなくて、前に出ようとしました。
「ダメ……!」カヤさんに止められました。「まだ出てきては、ダメ!」
――そう言われたら、引っ込まざるを得ません。
カヤさんは、空に向かって盾を掲げました。
「『ウォーターシールド』!」
盾に沿うように、大きな水の壁ができました。ちょうど、カヤさんたちの頭の上を覆うように水が広がっていて、しかもなぜか白く光っています。
次の瞬間、
――ドーーーン!
何か大きくて黒いものが、魔法陣から落ちてきました。
――一体何なのでしょう?『水の盾』にのめり込み、それでもまだ下へと落ちようとしてきます。
そして……
「「「きゃああああ!!」」」
『水の盾』が割れ、塔の屋上が丸ごと吹き飛びました。
カヤさんたちは下の階へ落ち、ワタクシも吹き飛ばされ、下へ転がっていきました。
そっと瓦礫の間から様子を窺うと、ドゥファンによる魔法で、追い打ちがかかりました。
「『アブソープション』」
――太陽の神の『呪い』です。ワタクシもかけられたやつです。
それが、レイさんリアさんソラさんカヤさん全員にかかりました。
レイさんたちは瓦礫の隙間から起き上がっていましたが、『呪い』にかかって、再び倒れました。
『あれは、恐ろしい呪いです……』ワタクシは、独り言をつぶやきました。『『星霊使い』とはいえ人間には、とてもじゃないですけど耐えられません……ですから、』
「『ターミネート』」
『ワタクシが、みなさんを守ります!』
ワタクシは、瓦礫の中から飛び出しました。
『『慈悲』!!』
「『サンダーショット:ハスタ』!!」
その時起こったのは、
ワタクシの魔法で、レイさんたちの体が白い光に包まれたことと、
ドゥファンがカヤさんの体を魔法で浮かせたことと、
リアさんの、最後の力を振り絞った一撃がドゥファンに向かったことと、
あと……
「ぐはっ!」
ドゥファンの声が聞こえ、そちらを見ると、肩に矢が刺さっていました。
『みなさんのことは……このワタクシが……』
暗くフェードアウトする視界の中で、ドゥファンが矢を抜き、血を流したままどこかへ去っていく様子が見えました。
そして……
――ぽんっ!
ワタクシの変身が解けました。
幼虫のワタクシは力尽き、その場にぽとりと落ちました。




