296話 6月20日#29〜塔の上の決戦①〜
レイさんの『空を飛ぶ魔法』で、『水の塔』の最上階までやって来ました。どうやらレイさんの推測が当たり、バリアが消えているようです。
そこで、カヤさんが待っていました。
「みなさん、ご無事でよかったです」
カヤさんは、レイさんたちにそう声をかけました。
「……で、これからどうなるんだ?」
「ここに、ある人物が来ます」
レイさんの質問に、カヤさんは真剣な表情で答えました。
「……敵……?」
「ええ、そうです」
「これだけ戦力が必要ということは、現れるのは1人しかいないわね」
「……ご想像のとおりだと思います」
カヤさんは、空を見上げました――誰かが宙に浮かんでいて、ゆっくりと下りてきます。
「隠れて!」ワタクシの一番近くにいたリアさんが、ワタクシにそう囁きました。
『は、はいっ!』
ワタクシは咄嗟に、階段のところにある死角に隠れました。
そうこうしているうちに、宙にいた人がカヤさんたちから離れたところへ降り立ちました。
レイさんが話しかけます。
「……ドゥファンか」
「……俺の名前を覚えていたみたいだな」
ソラさんが体を構えて、リアさんは弓に矢をつがえています。
「しかも、俺がここへ来ることを、既に知っていたみたいだな」
「……それで?」
リアさんの声には、いつもはない気迫がこもっています。
「『かに座の星霊使い』の能力か」ドゥファンはじっとカヤさんを見つめます。「未来を視る能力……確か『やぎ座の星霊使い』も持っていたな」
――ミライさん……やっぱりそうなんですね……
「貴様らにカンケルの能力を利用されるまいと思っていろいろ準備していたんだが、一歩遅かったようだな」
「……で、何か用か?」
レイさんは、何かめんどくさそうに訊ねました。
「用は1つ」ドゥファンは、空を指さしました。「貴様ら全員の魔力をもらう」
――突然、宙にいくつもの緑色の『文字』が現れました。いつの時代の、どこの『文字』かは不明ですが、複雑な線が絡み合う独特の『文字』でした。
「これ、明らかに『文字』だな」レイさんがそうつぶやきました――やはり人間のみなさんから見ても、これは『文字』に見えるんですね。
緑の『文字』は、塔の外周に沿ってワタクシたちを取り囲み、それぞれが別々のスピードでぐるぐる回り始めました。
「何だろう……?」
みんなで反応しかねていると、突然、『文字』はお互いに合体をし始めました。
隣同士くっついて『文字列』を作っているようです。
――と思ったら、ワタクシたちの周囲に、10個くらいの魔法陣が同時に現れました。
『「「「「え……?」」」」』
その10個の魔法陣から、猛烈な風が噴き出しました。10個が別々の方向を向いているので、ワタクシたちの周りは、めちゃくちゃな暴風が吹き荒れています。
『くうぅ~~!!』
ワタクシは、いつもはアームとして出している部品をピックの形にして、階段に突き刺しました。はっきり言って、飛ばされそうです。
他のみなさんのことが心配でしたが、ワタクシは自分のことで精一杯でした。
――と思ったら、とても眩しい何かが空から落ちてきました。
たぶんレイさんたちは、眩しすぎて『空から何かが落ちている』様子は見えないと思いますが、ワタクシはその魔法を知っていました。
『『隕石』……』
正真正銘の、太陽の神の魔法です。
まだ『塔』の上は風が吹き荒れていましたので、レイさんたちは動けません。
――ドーーーン!!!
『隕石』という名の光が落ち、『塔』の屋上がガラガラと壊れていきます。
その瓦礫の中に……あれ?誰もいませんね。
――あ、みなさん空にいました。
レイさんの魔法で宙に浮いている4人――の前に、見慣れない物がありました。
『とても大きいですけど……『盾』ですね』
人の体全体を覆うほど大きい銀色の盾で、中央に大きな青い装飾――宝石みたいですね――があります。とってもきれいですね〜!
もしかして……カヤさんが『盾』でみなさんを守ったのでしょうか?すごい!
それからすぐに、レイさんとカヤさんが魔法を発動させました。
「『インフェルノ』!」
「『スプリングショット』!」
ドゥファンの体が黒い炎で覆われ、そこへ『塔』の下から勢いよく大量の水が吹き出てきて、ドゥファンの体を貫きました。
――カヤさん。見た目によらずなかなかやりますね~!
ところが、
水が『インフェルノ』を消したり、火が『スプリングショット』を蒸発させたりした様子はないのですが、
「……思った以上に弱いな」
ドゥファンはピンピンとしていて、むしろ物足りなさそうにそうつぶやいていました。




