294話 6月20日#27〜地から天へ②〜
――さて。
ワタクシたちは『心臓』を、小屋の外まで運び出しました。
「……で、どうする?」
「ピエール33世は、このモンスターは何か、知ってる……?」
『えっと、ちょっとお待ち下さい。『心臓のモンスター』、『心臓のモンスター』、『心臓のモンスター』…………』
――何となく、思い出しそうです。
『えっと……『ざ』、いや『ぜ』、『ぜな』、えー、『ぜの』、『ぜのふ』……あ!思い出しました!『ゼノフィルス』です!』
「ぜの……ふぃるす?」
『気をつけてください!このモンスター、敵が一番苦手な姿と戦法をとって、戦い方を変えてきます!』
――ドクン!
『心臓』が、何かに反応したかのように、大きく脈打ちました。
『これは……来ますね!準備をしてください!』
その直後。
心臓から出ている血管が、驚くほどの早さで伸び始めました。ところどころ分岐して、少しずつ丸みを帯びた『何か』の形ができあがってきます。
レイさんたちは後ろへ下がりますが、血管は変わらず伸び続けます――これは、さすがのレイさんやワタクシでも、どうしたらいいか、わかりませんでした。
やがて心臓は、体の高い場所へと上っていきました。そして心臓と血管が、何度か大きく脈打ちました。
――ドクン!ドクン!!ドクン!!!
心臓と血管を、骨や神経や筋肉や皮膚のような他の器官が覆い始めました。頭には目や耳が生え、口が開き、歯も生えてきます。腕の先に手が生え、脚もすらりと伸びています。背にはたてがみ、そして尾も伸びてきました。
――こうして、現れたのは……
「ケン……タ……ウルス?」
馬の体と人間の上半身が合体したかのような怪物、『ケンタウルス』です。
しかも、リアさんは愕然として、体をカタカタ震わせました。
「け、ケイロン……あたしの、師匠……?」
「……どういうこと……?」
でも次の瞬間、『ケイロンさん|(?)』は後ろへ飛び退き、どこから出したか知りませんが、弓と矢を取り出し、弓に矢をつがえて引き絞りました。
「……この角度……!」ソラさんは、何かに気づいたようです。「きっと……『パワー……』!!」
ソラさんははっとしました。ぼんやりと頭の上を眺めます。
高めの角度から落ちてきた矢はたくさんに分裂し、ソラさんレイさんリアさんに大雨のように降り注ぎました。
「……きゃああああ!!」
――とりあえずワタクシは、自分の体を張ってリアさんをガードしました。
矢が落ちてこなくなったので、ワタクシはソラさんとレイさんの姿を探しました。
――あ、いました。全身傷だらけですが、レイさんの大剣でやり過ごしたようです。
「……ちょっと、レオ!」リアさんが文句を言いました。「ちゃんと魔法盾張ってよ!」
「……あたしは……シールドが、使えない……」
――そういえばソラさんは、カヤさんから『シールドを絶対使うな』と言われていました。
ふと見ると、『ケイロンさん|(?)』が再び矢を放とうとしています。
「む、無理よ!あたしの師匠に『ガードなし』って、勝ち目はほとんどないわよ!!」
その瞬間、矢は放たれました。今度は雷を帯びて、こちらに向かって飛んできます。
『リアさん、危ない!』
ワタクシは、慌てて逃げようとしました。
リアさんが、こうつぶやく声が聞こえてきました。
「あたしの師匠に勝てる人なんか……この世界にいるわけがない……」




