293話 6月20日#26〜地から天へ①〜
いや〜!やっぱり機械ってすごいですね〜!ワタクシ、感銘を受けました!
――違法じゃなかったら。
まったく!何でこんな恐ろしい機械を作ってしまうんでしょうね、人間は!
『まあ、それでもワタクシはこう、人間を憎めないわけです』
「……何か言った?」
階段を飛んで上り始めた時には、リアさんはなぜかへろへろになっていました。
『いえ、別に、何でも』
ワタクシは、頭に乗っけているリアさんが落ちない程度に、上の方を見上げました。
『あ!見てください!元の部屋まであと少しです!』
さて、レイさんとソラさんはどうしているのでしょうか……
――ヒュッ!
おや、こちらへ何かが飛んできました。
それを見たリアさんが、突然「行くのやめましょ?」と、言い始めました。
『え?どうしてですか?』
「今飛んできたの……ナイフよ?」
振り返ってみると、確かに壁にナイフが刺さって……
――でも、気になります。レイさんとソラさんが。
ワタクシは最上段までたどり着くと、リアさんを乗っけたまま床ギリギリの高さを飛び、扉の陰から外に出ないように気をつけながら、部屋の中を覗きました。
「とにかく、その『心臓の箱』を元に戻してくれ!」
知らない男性の声が聞こえてきました。姿は見えな……あ。今、扉の陰から出てきました。手にナイフを持っています。
男性が指さしているのは、ソラさんが床に落とした『心臓』です。どういうわけか、ずっとドクンドクンと動いています――怖っ!
「そういうわけにはいかない……」ソラさんの落ち着いた声も聞こえてきました。「なぜ、あたしたちの邪魔をするの……?」
男性は、ふうふうと荒い息を吐いていました。体も震えていて、ワタクシたちの中で一番冷静さを失っているようです。
「これも、カヤを守るためなんだ。妹を守るためなら、僕だって……!」
――おや。かに座の星霊使いさんのお兄さんですか。しかも、雰囲気的にソラさんとレイさんの知り合いのようです。バイトで会ったんでしょうね。
「カヤは星霊使いだ。そんなにカリカリしなくても、自分の身は自分で守れる」
レイさんはそう言って、男性に近づいていきました。
「こっち来るな……!」
「カヤさんと『箱』は、関係性がない……」ソラさんは首を傾げました。「もしかして、自分の意思じゃなくて、誰かに脅されてる……?」
「…………」
――あ。レイさんが男性からナイフを奪い取りました。
レイさんはそのナイフをぽいっと投げ捨てて、「なるほど」とつぶやきました。
「つまり、『箱』を移動させたり処分したりしたら、『塔』のバリアを壊す……みたいなことを言われたのか」
「なぜ、『塔』にバリアがあると知って……!?」
「今、何となく思いついた」
「え?」
「ねえ、教えて……誰に脅されて、こんなことをしているの……?」
男性はしばらく考え込んでいましたが、やがてはあと大きなため息をつきました。
「若い兵士数人を連れた……女なんだ。全身に緑のタトゥーがある……」
それは、ユスティティアの集落の人の特徴ですね。
「奴らはカヤと『塔』のことを知っていて、その『箱』を動かすな、解体するなと脅迫してきた。中にいるモンスターを暴れさせるぞって……僕はその『箱』も『モンスター』も何なのか知らなかったけど、ヤバい物だってことは何となくわかっていた」
男性は、ソラさんとレイさんの真剣な顔を見て、顔を青くさせました。
「も、もちろん最初は拒否したよ?でも、『箱』から出てきた『心臓の怪物』が強くて、恐ろしくて……あんなのがカヤに近づいたらって想像して。あれなら、簡単に『塔』のバリアを破壊できるって」
「私の勘では、『箱』の状態とは関係なく、『塔』のバリアは破壊されていると思うけどな」
「オギさん、大丈夫……この『モンスター』は、あたしたちに任せて……」
男性は何度かソラさんとレイさんを交互に見比べ、やがて崩折れて床に手をつきました。
――それにしても、この男性の名前は『オギさん』というのですね。恐ろしい『心臓の怪物』を見て、冷静な判断を失ったのでしょう。
オギさんは弱々しく「頼んだ……」と言って、両手で顔を覆いました。ソラさんはオギさんの肩を優しく叩き、『心臓』を持ち上げました。
「さて。さっさと片付けるか」
レイさんは外へ出る扉へ向かい、ガチャリと開けました。ソラさんもその後に続きます。
「時間がない……あたしたち3人で、モンスターをやっつける……!」
「3人……て、あたしもってこと!?」リアさんは、ワタクシを揺すり始めました。「やだ!ピエール33世、この人たちを止めて!!」
『……ワタクシも、2人の意見に異論はないのですが』
「わーー!!月の神なのに慈悲がないーーー!!!」
――喚かれても……ここで倒さなかったら、もっと大変なことになりますから……
『……頑張ってください!!』
「月の神のバカーーー!!!」




