290話 6月20日#23〜でっかいのとちっこいの①〜
『リアさん、後ろです!』
「『アロースプリッター:ミレ』!」
あたしははっきりとは見えないんだけど、あたしを乗せて飛んでいるピエール33世は、暗くても何があるかしっかりわかるみたい。
あたしはピエール33世の指示に従い、あたしたちに群がる、大量のちっこいコウモリたちを撃退していた。
『リアさんが小さいおかげで、『クライアウトバット』は何とか倒しきれそうですね!』
「モンスターってデカいイメージがあるけど、あたしの身長よりちっこいのもいるなんて、知らなかったわ!」
こいつらは小さすぎて、カイトの矢では絶対に当たらない。
やっぱり、矢の大きさを調整できるあたしの方が、『脳筋』なんかよりずっと役に立つわね♪
『それにしても、こんなにモンスターが出るってことは、この街のバリアは機能してないんでしょうね、たぶん』
「『サンダーショット:ミレ』!」あたしは大量の落雷を撃つと、ピエール33世の方を向いた。「気になるわね。バリア回復させないと、いくら戦ってもキリがないし」
『街のバリアって、どこに『魔力源』があるんですか?』
「そんなの知らないわよ!」
――それにしても、『クライアウトバット』の数が異常に多いわね。多人数戦が得意なあたしでさえ、全部を仕留めきれないくらい。
「こいつら以外のモンスターが出てきたら、厄介……え!?」
あたしは真上を見上げた。さっきまでの星空が見えなくて、真っ黒になっていた。
空に、『何か』がいた。あたしじゃなくて普通サイズの人間と比べても、さらに大きな『何か』が……
――と、思ってたら、その『何か』は、突然街に向かってダイビングしてきた。
――ズドーーーン!!
「きゃあ!!」
ピエール33世は咄嗟に金属の板を出して、それを盾にして自分自身とあたしを守ってくれた――こういうところは気が利いてて、嫌いじゃないわよ♡
壊れていない街灯の明かりに照らされていたのは、デカいサメ。体の大きさは、たぶん、あの、えっと……『ホホジロザメ』だっけ?あれの倍くらい。人間なんか、軽く一呑みにできるわね。
しかも、砂漠の街の上を、水の中のように泳いでいる――何あれ、あんなの退治しなきゃいけないの!?
「ね!ピエール33世……逃げましょ!」
『な、何言ってるんですか!』ピエール33世は、びっくりしたときの白い光を放った。『過去一で頑張るんじゃなかったんですか!?』
「それは『塔』の上での話よ!」あたしは、あたりをウロウロしているサメを指さした。「こんなに可憐なあたしが、あんなのに勝てるわけないでしょ!?」
『それは……やってみないとわかりませんよ!……ほら!水の中の生き物なら、雷で感電するかもしれないし……』
「あれは『空の生き物』よ!」
『そでしたー……』
そんなことを言い合っているうちに、サメがこちらを向いた。気づかれたみたい。
「とにかく!全速力で逃げて!!」
『ひえええ!!!』
ピエール33世は一生懸命飛んでたけど、サメは尾びれを数回振っただけで、あたしたちのすぐ後ろまで迫ってきた。
『「いやあああああ!!!」』
――でも、その後は何も起こらなかった。後ろを振り返ると、何かがサメを絞め上げていた。
「あれは……金属の……『ゴーレム』?」
ゴーレムは、片手でサメを遠方へぶっ飛ばした。あたしはしばらくぽかんとしていたけど、やがてその正体に気づいた。
「……レオ!?」
『ソラさん……!!』ピエール33世が嬉しいピンク色に光った。『よかったあああ!一時はどうなることかと……!』
「怪我……ない……?」
「それよりあんた、持ち場を離れて平気なの!?」あたしはぶーっと膨れた。「あんたの持ち場は、あたしと正反対の方でしょ!?」
「あなたの助力……欲しかった……」
「何よそれ!あんたそれでも星霊使い!?」
「……たぶん、勘違いしてる……」レオはそう言って、あたしごとピエール33世を握りしめた。「城門を守ることじゃない……とにかく、来て……」
「つぶさないでよ!」
「強く握っても、つぶれない……小さいから……」
レオのゴーレムは、あたしたちを指の間に閉じ込めて、猛スピードで走り始めた。
「……あーもー!意味わかんないー!!」
こうしてあたしたちは、街の別の場所へ向かっていった――問答無用で。




