289話 6月20日#22〜レイのモンスター狩り④〜
だんだんイライラしてきたのか、『人間』は、今度は自分の体の中にある『何か』を掴もうとし始めた。
そしてその『何か』に絡みつこうとする羊毛を手で払い、何とか守ろうと頑張っていた。
「あー。あれが発火したら、ダメなやつ?」
眺めていると、炎に似た色の小さな球体が何となく見えてきた。
たぶん、その球体の外殻は火に強いけど、中にある『核』は火に弱いんだろう。たぶん。
『ウールプロテクション』に物を突き刺す能力はないが、熱いのは熱いので、本能的に守る必要があると感じているのだろう。
「ということは、あの球体を壊せばいいのか」
私は、大剣を目の前に浮かべた。
「『インフェルノ』!」
『人間』を、黒い炎が焼き焦がす。人間は、球体を持ってない方の手で黒い炎を掴み、口の中に入れようとした。
しかし、全て食べ終わる前に、脚にまとわりついていた黒い炎が『ウールプロテクション』に引火した。
「グオオオ……!!」
『人間』は、少し苦しそうだったが、だんだん慣れてきて、再び球体に意識を向けた。
――球体は、完全に羊毛に包まれていた。
「グアアアアアア!!」
急いで羊毛を引きちぎろうとしたが、そこへ私の大剣が飛んできて、球体に突き刺さった。
私が『人間』のところまで飛んで、剣の柄を掴んで引き抜くと、球体の中身が『インフェルノ』の火に触れ、『人間』は叫び声を上げた。
「ギャアアアアア!!!!」
随分苦しんでいる。
――そして、
「ギャアアアアアア……!!!」
体から火がぼろぼろと剥がれるように落ち、『人間』はその場で倒れた。
球体の中身が火に焼かれ、体を構成していた『火』が、人間の周囲の地面でくすぶっていた。
「ギャアアアアア……アアア……!!」
腕も足もなくなり、頭もぼろぼろになっていく。
「アアアア……アア……!」
首が消え、肩が消え、残りわずかな火が落ちていく。
「アアア……ア……ア……」
全身の炎が消え、地面に球体がコロンと落ちた。
私は近づいてそれを拾い、外殻の傷口から中を覗き込んだ。
――中にあったのは……
「……人形……?」
焼き固められた土の人形……私が剣で刺したせいか、背中に割れ目ができている。
人形の中に何かが入っていたらしく、少量の灰が割れ目からこぼれ落ちた。
「ふーん……」
私はどうするか迷ったが、そのままにしておくと復活しそうな気がして、結局ぽいっと捨てた。
土の人形は地面に落ちると、パリンと音を立てて粉々になった。
「……今度こそ、終わった……のか?」
――しかし、なぜこんなにモンスターが現れたんだろう?
「どこかに呼び寄せる装置でもあるのか……?」
――と、その時、
「れええぇぇぇええええいいい!!!」
再び、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
聞こえた方を振り向くと、地上の炎に照らされた飛空艇が、片側に傾いていた。
そして、誰かが船から飛び降りた。
私はピンときて、その影を全速力で追いかけた。
何とか手を掴んで引き上げると、その人物はこちらを見ることなく、ふうと息を吐いた。
「……落下するの、怖かったんじゃないのか?」
と、私が訊ねると、
「……レイがいれば、別の話だ」
その人物――カイト――が、こちらを見てニヤッと笑った。




