288話 6月20日#21〜レイのモンスター狩り③〜
――そういえば……あれ?気づいたら私の周りが、私の炎で焼き尽くされている……
大きな火があちこちで燃え盛り、建物はみんな倒壊している。
「……やり過ぎ?」
――でも、強いモンスターを相手にしてたし……
そんなこと考えてたら、遠くから声が聞こえてきた。
「れええぇぇーーい!!」
振り返ると、1人の人間がこちらへ走ってきていた――あ、カイトだ。
「何ー?」とりあえず返事をしてみた。
「俺を……あの飛空艇まで飛ばしてくれ……!」
「おう!任せろ!」
――と、言いつつ「飛空艇?」と、心の中で首を傾げた。
とりあえずカイトを浮き上がらせ、カイトが指をさした方向を向くと、地上の炎が照らす、黒い何かが目に映った。
たぶん、あれだな……と思って、カイトをそこまで打ち上げた。
――さて、どうしよう?
そろそろ『塔』の方へ行った方がいいのだろうか?
私は収納からジャイロコンパスを取り出した。テンが持っていたやつだ。
私が方向音痴であることをカイトが気にして、私に持たせた。
「……確か、赤い矢印の方角に……えー、何かぐるぐる回ってるんだけど……」
確か、心の中で具体的な場所を、名前だけでもはっきりと思い浮かべないと、赤い矢印は正常に動かないらしい。たぶん、私に迷いがあるんだ。
「まだやることがありそうな気がする……」
ジャイロコンパスを仕舞い、あたりを見渡した。
――シューー……
何か、音が聞こえてきた。
そして、私が今まで散々暴れた方向を向いた。
――何か、煙のような不定形のものが、そこにあった。
周辺は燃えているので、大量に煙が上がってはいた。
だが、それとは明らかに違う。煙ではあるけれど、ひとところに集まって、ふよふよ浮いている。
「……何だろう……?」
しばらくすると、突然『煙』が動き出した。『煙』が手近な炎に近づくと、その炎はなぜか鎮火した。
すると『煙』は次の炎に向かい、その炎を消した。
それが何度か繰り返された後、だんだん煙がうっすらと色のついた『人間』――ちょっとデカいけど――の形になってきた。
「人みたいに見えるけど……身長何メートルあるんだろう?ソラのゴーレムと同じくらいか?」
私の周りにある炎はどんどん消えていき、その『人間』がどんどんはっきり見えてきた。炎のような赤色に光っている『人間』だった。
「えーっと……やっぱりこれ、モンスターだよな……」
モンスター図鑑を出すかどうか迷っているうちに、『人間』は準備が完了したようだ。大きな吠え声を上げた。
「……何か、言葉は通じなさそう」
――とりあえず、拳で建物を粉砕しているので、危険なモンスターなんだろうなと思った。
「……まいっか。とにかく戦えばいいんだから」
私は、『人間』に向かって突撃していった。
――その後にわかったこと。
『人間』がとる主な行動は、『殴る』、『踏み潰す』、『火を吐く』、『火を食べる』の4つだった。
――うーん、困った。私は火を使った魔法を中心に持っているので、何使っても、その火を飲み込まれてしまう。
しかも、『人間』は火を吐く。周囲の建物が再び燃え上がり、そこらに火柱がいくつも立った。
「向こうは火を吐いて、こっちの火は効果がない……」
そして、『人間』は殴ったり踏んだりで街を破壊しまくっているのに、その頭の上から私が大剣を振り下ろしても、すり抜けて全然叩きつけられない。
大剣の柄はかなり熱くなっていた。推定1000度以上にはなっている。私以外の人間は触ることができない。
「向こうは叩けて、こっちは叩けない……」
――誰かが意図的に用意したと疑いたくなるような、相性の悪さである。
私も火は平気なので、『人間』の吐く火が当たっても何ともないのだが、暴力は、たぶん1発アウト。
「こうなったら……」
火ではない魔法に頼るしかない。
「『エレクトロウェイブ』!」
「……ガアアアア!!」
――全く効果がなかった。
「……まあ、当たり前か」
この魔法、『物体』がないと効果がないらしいから。
「じゃあ、『ミラージブラスト』!」
渦を巻く強風は『人間』を巻き込み、霧散させた。
――けれど、すぐに火が集まってきて、何事もなかったかのように活動を再開した。
「ん、んー……じゃあ、『ウールプロテクション』?」
羊毛は『人間』の体の中で、植物が生えて成長するように伸びていった。
しばらく見守っていると、
「ギャアアアアア!!」
『人間』が、先ほどの咆哮とは異なる叫び声を上げた。
「……あれ?効いた?」
『人間』は自分の体の中へ腕を突っ込み、羊毛を引きちぎろうとしていた。
羊毛は、ぐんぐん伸びていった。
『人間』はその場で座り込み、羊毛を引きちぎり続けている。
「うーむ。奇っ怪な」
この『ウールプロテクション』には、いろんな特徴がある。
まず、伸びる。
そして、絡みつく。
さらに、魔法を伝線させる。
忘れてはいけないのが、魔法盾の一種であること。
そして最後に、唯一『フラッシュバック』で燃え上がる。他の『火』の魔法は、ただ伝線するだけ。
「もしかして、自分の『火』が伝線するのがダメなのか?変な奴……」




