287話 6月20日#20〜レイのモンスター狩り②〜
――で、あと3頭。
『キングヴェノムドラゴン』は、人を含めた生き物に毒を注入して獲物を殺す。それをあちこちで繰り返し、しばらくすると最初の死体に戻ってきて食べるらしい。
――つまり、何もしなくてもドラゴンたちは私のいる方へ戻ってきた。
2頭のドラゴンが、同時に私に襲いかかってくる。
「『フレアスラッシュ』!」
街路樹が何本か倒れ、片方のドラゴンの進路を塞いだ。
――そして、そのドラゴンが動きを止めた瞬間、私はもう片方のドラゴンを退治した。
「『エレクトロウェイブ』!」
どうも、乾燥地帯で暮らしてはいるが、『キングヴェノムドラゴン』は熱耐性がそれほど強くないようだ。
熱くなった空気の中でドラゴンは焼け、力尽きて動かなくなった。
――のと、同時に。
「『ミラージブラスト』!!」
熱気を巻き上げ、もう1頭を空に打ち上げる。
焼け焦げたドラゴンは、地面に叩きつけられたまま、ピクリともしなくなった。
「あと、1頭……」
――どこへ行ったんだろう?
飛んでいるうちに、あたりが霧で視界が悪くなった。これでは、どこにドラゴンがいるのか、探すことさえできない。
こんなときは……
「『クリムゾンブレス』!」
――炎で、無理やり霧を吹き飛ばした。
よく見ると、下に人がいっぱいいる。今まで動いていたようだが、霧が晴れるとその場に倒れて動かなくなった。
――はて?ドラゴンの能力にこういうのあったか?
よくわからんが、同じように霧を炎で払ってたら、最後の『キングヴェノムドラゴン』を見つけた。人の死体を食べている。
何かその人がかわいそうだが、仕方がない。
私は『ウールプロテクション』と『インフェルノ』で、最初の個体と同じようにドラゴンを倒した。
――しかし、霧が晴れない。
「……じゃあ、ドラゴンは関係ないのか」
気象現象?――ほら、砂漠の夜は冷え込むし……
「……でも、冷えるといっても、こんな濃い霧ができるほどじゃなかった気がする」
そんなことを考えているうちに、また霧が濃くなって視界が遮られるようになった。
すると、霧の中から何かが飛び出してきた。
私はびっくりして大剣を前に構えた。
「これは……カラス?」
――いや。こんな大きなカラスなんて見たことがない。人間くらいの大きさの生き物なら、その脚で掴んで楽々運ぶことができそうだ――普通のワシよりずっと大きいな。
嘴の一撃を大剣で遮られ、『カラス』は後ろに下がった後、身を翻して、私に再び狙いを定めた。
――速い。私は、何とか大剣で『カラス』を受け止めることしかできない。
『カラス』は、嘴や足の爪で攻撃してきた。それ以外の攻撃方法は、持ってないのかもしれない。
「こうなったら……」
『キングヴェノムドラゴン』は、飛ぶのが苦手なようで、私が少し高いところを飛んでいると、ジャンプして私の足首に噛みつこうとしていた。
一方この『カラス』は、大きい割に空を自由自在に飛び回れる。
しかも今は夜。カラスは、こんな時間にはあまり活動しないと思うんだが……
再び『カラス』がやって来た時、私は魔法を発動させた。
「『ミラージブラスト』!!」
私の周りに、熱い空気の風がまとわりつく。
私に向かってきた『カラス』は、風の渦に巻き込まれた。
私は周囲の風の壁の中に、カラスの翼を確認した。
「……えい」私は頭上にあった風の『穴』から抜け出し、風の渦に向かって魔法を放った。
「『クリムゾンブレス』!」
渦の中へ吸い込まれた炎は、渦に乗ってすぐに上昇してきた。ただの熱風ではなく、炎が渦となって吹き荒れた。
その時、渦に乗って『カラス』が飛び出してきた。私の左腕に、嘴が突き刺さった。
「……いたっ!」
――でも、それだけだった。『カラス』は力尽き、再び風の中へと落ちていった。




