286話 6月20日#19〜レイのモンスター狩り①〜
私は、言われたとおり南の城門まで来たんだけど……『敵が来る』って言われたから、てっきり人間が来るんだと思ってた。例えば星霊使いとか。
――しかし、現れたのは、
「『キングヴェノムドラゴン』……」
それも、前回遭遇したやつより体が大きい。
そのドラゴンが、空から滑空してきた。
城門を守る兵士が騒いでいて、城門を閉じようとしている。でもその前に、兵士たちがドラゴンに噛みつかれ、その場に倒れていた。
「んー、手伝った方がいいのかな……?」
――うーん。おひつじ座の星霊使いの魔法って、意外と素早い相手と相性悪いからなあ……
「もしかして、『敵』はあのドラゴンにやられたとか……?」
――だったら楽だ。
そんなことを思っているうちに、城門は音を立てて閉じられた。兵士たちは退却し、ドラゴンは門の周囲を嗅ぎ回っている。
「……私の出る幕はないのか……?」
――そういえば、以前テンから『軍は、空を飛んでいる人間をモンスターだと認識して攻撃してくるから、できるだけ飛ばないように』という忠告を受けた。
そろそろ下へ降りて退散するかな……
そんなことを思っていると、
「シューーーーー!!」
「シャアアア!!」
「シュルルル!!」
明るいはずの星空が、一面黒いもので覆われた。
「……あれは……」
『キングヴェノムドラゴン』の新手が、砂の上に次々と降りてくる。
やがて、5頭の『キングヴェノムドラゴン』が城壁を取り囲み、入れそうな場所はないかとあたりをうろうろし始めた。
「うーん……」
以前、ソラから「『キングヴェノムドラゴン』は単独行動を好む」という情報を得たのだが……
縄張り意識が強いはずなのに、このドラゴンたちは、お互いに争う様子がない。
「『魔巧防壁』展開!!」
――ん?何か声が聞こえる。
見ると、兵士たちがバリアのさらに内側に、魔巧機械で作る魔法盾を設置している。
それを見てから、もう一度バリアをよく見ると、ところどころ色が変色していることに気づいた。街灯の明るさでもわかるくらいに。
――そういえば、ソラのシールドも変色させて壊していた。このドラゴンには、バリア、シールドの類を破壊する能力があるらしい。
「……大変そうだから、助けるか」
私は地面に降りると、兵士たちのいるところへ、とことこと近づいていった。
――ところが、兵士に話しかけると、
「今は忙しい!後にしてくれ!」
――全然相手にしてもらえなかった。
「……当たり前か」
――じゃ、どうしよう?
「……バリアを破壊するか」
どうせそのうち破られるものだし、シールドだって、ただの時間稼ぎにしかならない。
――やるなら、全部倒す。
私は、大剣を取り出した。
「『エレクトロウェイブ』」
私もよくわからんが、この魔法は『マイクロ波』なるものを発生させるらしい。それを発生させると、周りの物が温められ、なぜか破裂することもあるらしい。
――で、使ったはいいけど、
「「「あちぃーーー!!」」」
兵士たちも、温めてしまった。
でも狙いどおり、バリアが温まってどんどん薄くなっていった。
そして、
――パキッ!
音を立てて、バリアが消えた。
防壁の展開もまだ終わってなかったので、『キングヴェノムドラゴン』たちが、次々と街の中へ侵入してきた。
「こ、攻撃を……!」
普通の兵士では、俊敏なドラゴンの動きに対応できない。
すぐにドラゴンにやられ、犠牲者が出てしまった。
私も、なりふり構っていられない。飛ばないと、ドラゴンに追いつけない。
私は地面を蹴り、先頭にいる大きなドラゴンに向かって飛んでいった。
「シューーー!!」
ドラゴンは私に気づき、こちらを振り向いた。
「『ウールプロテクション』!」
とりあえず、前回の戦いで有効だった魔法を使ってみた。
――で、何しよう?
いや、決まってる。火力の高い魔法で攻撃する。
「『インフェルノ』!」
『ウールプロテクション』は時間がたつとどんどん伸びる。
伸びる羊毛に絡みつかれ、動けなくなった『キングヴェノムドラゴン』の体を、黒い炎が焼き焦がす。
「……シャアアア!!!」
『キングヴェノムドラゴン』は火だるまになり、街道の上を転げ回った――どうやら、かなり効いているようだ。
私は、追い打ちをかけることにした。
「『クリムゾンピアシングブレス』!」
ブレスはドラゴンの体を貫き、ドラゴンはそれ以上動かなくなった。
「……倒せたな」
私はドラゴンの様子を見て、そう判断した。
――さて。まだ4頭いる。
よく見ると、あちらこちらで人が倒れている。みんな、噛まれたり引っかかれたり刺されたりしている。
「『街の人が巻き込まれるのも厭わず全力で戦うこと』……か」
――これ以上の犠牲が出ないよう、全力で戦うしかない!
私は前方で、倒れている人のにおいを嗅いでいるドラゴンに、強力な一撃を加えた。
「『おひつじ座の怒り』!」
そのドラゴンは、2つの盾に挟まれた上に8つの炎の槍に刺され、地面に横たわったまま動かなくなった。




