282話 6月20日#15
――思えば、最初からレイに任せておけば、船は簡単に壊れたのだろうか?
「それはどうなんだろうねー」テンは首を傾げた。「あのクラスの飛空艇になると、普通にバリア張れるからね……魔法が効いたのかどうか……」
そしてテンは、俺にニコッと笑いかけた。
「少なくとも『うお座の星霊使い』が女で、槍使いのおねーさんたちを連れてるってことがわかっただけでも、収穫じゃない?」
「……だが、あの能力は確かに厄介だった」俺は腕を組んだ。「今回は向こうが油断していたから、『バナナの皮』と『カメムシ爆弾』で片付けられたけど、次に会った時は、絶対そうはならない」
「うーん、『体が霧』ねえ……」テンは上を見上げた。「ゾンビも『霧』で操っていたし、『霧』の魔法が使えるのかなあ?」
「……そういえば、ゾンビどもはどこ行った?」
「消えた」テンは肩をすくめた。「たぶん、魔法を解除すると、ゾンビもいなくなるんじゃないかなあ?」
「……この街の人たちなのに……」
「……ね。殺して、死体を残しもしないなんて……まあ、おかげで悲惨な結果を見ずに済んではいるけど……」
通りは静かだ。人っ子1人おらず、俺とテンの足音だけが聞こえる。
「どこ行くー?やっぱり『塔』かな?」
「……だろうな。カヤの『予知』を聞く限り、あの『塔』が最終決戦の場所になりそうだもんな」
「でも、ここから『塔』まではちょっと距離があるよ?君、走れる?」
「……やっぱり走らないとダメか」
「……ね。こんなところに出てきたら、ね」
物陰から、ピスケスが現れた。あちこちに擦り傷を作っているが、臭い汁を吹きかけられただけなので、まだまだ元気そうだ。
「……あの爆発のせいで、救命ボートが吹き飛ばされた」ピスケスはこちらを睨みつけた。「あんたたちのせいで、あたくしは傷ついたの。こんなに血だらけになって……!!」
「……殺された街の人たちに比べれば、随分マシだと思うが」
俺は、冷たく言い放った。
「あんたたちを許さない……『うお座の星霊使い』の名にかけて、あんたたちを殺す……!!」
「……何かかける場所、間違っている気がするけど」テンはそう言って、俺にウィンクした。「ここは僕に任せて!たぶん、僕は『塔』に行く必要がないから」
「……恩に着る」
「あたくしから、逃げられると思ってるのかしら?」
いつの間にか、俺たちを槍使いの女たちが取り囲んでいた。俺の進路も塞がれている。
――と、思ったら、テンが「ダンッ!」と銃を撃った。俺の進路を塞いでいた女が「いったー!」と叫んで目を瞑った。
すかさず俺は、その女を押しのけて、包囲網から脱出した。他の女がこちらを振り向いた時、テンの明るい声が聞こえた。
「最初に動いた人に、このゴム弾をお見舞いしちゃうぞー!結構痛いから、覚悟してねー!」
――ゴム弾は効くのか。
俺はそう思いながら、その場を後にした。




