279話 6月20日#12
――さて。
船内に忍び込めたのはいいが、ここから先はどうすべきか……
とりあえず、飛空艇のエネルギー源である『蓄魔力池』と、動力の『魔巧機械』が|(普通は)ある地下を目指そう。
船内は、予想に反して人がほとんどいなかった。
――代わりにいたのは、ロボットたち。
『シンニュウシャ、ハッケン!』
『人数は1……抹殺セヨ!』
――これほど面倒なことはない。
俺は人型のロボットを突き倒し、ドローン型ロボットの光線攻撃をかわしながら、階段を探して走り回った。
ロボットは硬いので、殴っているとだんだん手が痛くなってきた。
「この後で、あの塔の上まで駆け上るとか……さすがの俺でも体力が持たないんじゃ……?」
――既に、選択を間違えたかもしれない。
でも俺は、まだ飛空艇から脱出するつもりはなかった。
そうこうするうちに、俺は下へと続く階段を見つけた。急いで駆け下り、一番下の階へと飛び込んだ。
その階は、ランプが少なくて暗かった。奥へとゆっくりと進むと、そこには人間の背丈ほどもある大きな歯車のついた機械が置いてあった。
そしてそこに、意外な人物がいた。
「あ……あんたは……」
赤い目、緑のタトゥー……片方の手に球体を持ち、神秘的な瞳でこちらを見つめている。
「ユスティティアにいた……」
「ええ。エステルです」
――『検査』という名の占いによって、訪問者が集落に入っていいかどうかを決めていた人だ。
「あなたたちには申しわけなくて……」と、エステルさんは謝った。「まさかあなたたちの占いの結果を奪われるとは……」
エステルさんが言うには、昨日の夜、ユスティティアに強盗が現れたらしい。
そいつはエステルさんを捕まえて、俺たちのことを洗いざらい吐かせて、さらに占いの結果の書かれた紙とエステルさん本人を運び出して、飛空艇に乗せたらしい。
よく見ると、エステルさんは片方の腕をパイプに縄で括りつけられていた。
俺は剣で縄を切ると、エステルさんは立ち上がった。
「占いによると、私はあなたより先に動く方がいいようです」
「……そうなのか?」
「これから起こることはわかっています……1つ上の階にある救命ボートを私が用意するので、準備ができたら……」
「……いや」俺は機械を見上げながら言った。「エステルさんは、1人だけで脱出してください」
「……え?」
「俺には構わず……船から降りてください。俺は……自分で何とかします」
「…………わかりました」
エステルさんは頷いて、俺が来た方向へ向かおうとして、ふと立ち止まって、こちらを振り返った。
「1つ伺いたいのですが……あなたたちが連れていたロボットは、一体……?」
「ロボットは、ロボットだ」
俺がそう断言したので、エステルさんは「そうですか」と言って、部屋から出ていった。
「……存在に、気づかれたか」
俺は、手元にあった最後の手榴弾を手にした。
「……意外と、占いも当たるものなんだな」
俺は、機械に向かって手榴弾を投げ、すぐさま物陰に隠れた。大きな爆発音がして、歯車がキキキと耳障りな音を立てた。
やがて、船が傾き出した。おそらく左右にエンジンがついていて、俺が片方を壊したからだろう。
俺は、傾いている船の中を、再び走り始めた。




