278話 6月20日#11
これは……結構マズい。
剣と矢を封じられたら、俺にはなす術もない。
――それに、槍を持った女たち。
かなりの手練らしく、俺をあっという間に取り囲んで、槍で薙ぎ払ってきた。
「……くっ!」俺は切り傷を作りながらも、どうにか包囲網を抜ける方法を探した。
ちなみに、槍の女にも斬りかかってみたが、ピスケス同様霞のような体をしていて、傷つけることはできなかった。
でも、槍は本物だ――また俺の腕をかすった――どうも、幻術の類にかかったわけではなさそうだ。
「……さあ、どうする?『闘技士』のカイト君?」
「………………」
確かに、ピスケスはいるだろうと予想していたが、まさか待ち構えていたとは思っていなかった。
――そして、俺との相性が悪い。魔法の使えない俺には、『霧』や『霞』をどうにかする手段がない。
頼みの綱は、テンからもらった道具たち。いろいろもらったので、どれかは有効かもしれない。
――片っ端から、試してみよう。
後ろを振り向き、油断している女の槍を腕で弾いて、体を蹴り飛ばした。
「……きゃあ!」
他の女の槍が俺を突き刺そうとするが、倒れた女のいたスペースへと転がりこんで、地面に『霧を消す』お香を置いてみた。
――結果。
「……チ!」
俺は、倒れた女の手から槍を奪い、近づいてきた別の女に斬りつけたが、やはり霞のようにすり抜けて、効果はなさそうだった。
「あなた、『香り』であたくしに勝てると思う?」
――なるほど。この道具は、『香り』が匂うほど濃くないと、効果がないのか。
ピスケスの脇にあるお香のせいなのだろう――それなら、別のを使ってみよう。
偶然とはいえ、せっかく槍を手に入れたので、槍使いの女たちの攻撃を、槍を使ってしのいだ。
そうして甲板の端まで移動すると、甲板の中央に向かって手榴弾を投げた。
俺の足元にあった段差に伏せて爆発をやり過ごした後、どうなったのか確かめるために顔を上げた。
――甲板の中央に、大きな穴が開いていた。
だが、そこから離れていたピスケスは涼しい顔をしていたし、槍使いたちは、再び俺を取り囲んだ。
――そして、俺が持っていた槍は奪われた。
「ふふふ」ピスケスは、不敵な笑みを浮かべた。「次はどうする?」
その時、あることに気づいた。
――さっき、女たちのうちの1人を蹴り飛ばしたな……
もしかしたら、殴ったり蹴ったりは有効なのかもしれない。槍の攻撃をかいくぐれたらの話だが。
――まあ。確かに、完全に霧になっていたら、槍が使えないもんな。
俺は、刺されるのを覚悟で、さらに甲板の奥の方へと走った。脇腹を刺されたが、気にせず飛空艇の前方の甲板めがけて走っていく……
――と、見せかけて、俺は後ろを振り向き、テンからもらったあるカプセルを投げつけた。
そこに現れたのは……大量の『バナナの皮』。
「きゃあ!」
先頭の女が派手にすっ転び、後続も女の体に足を取られ、なだれ込むように地面に倒れた。
俺はその隙に、再び後方の甲板に向かって走った――「たぶん、前方には別の敵が待ち構えている」と思ったからだ。
俺は、女たちをほとんど踏みつけるようにして走り、ピスケスが仁王立ちしている場所へと戻った。
「あなた……」ピスケスは、だいぶ怒っているようだ。「随分くだらない道具を持ってたみたいね」
「……くだらなくても、有効なら問題ない」
「……で?あたくしに用があるのかしら?」
その言葉を聞くと、俺は返事をすることなくピスケスにカプセルを投げつけた。
カプセルはピスケスに当たり、その衝撃で2つに割れた。
「……何をするつも……ケホッ!」
ピスケスは鼻をつまんで、ひどく苦しみだした。
「ケホッ……な、何これ……くさっ!!」
「……『カメムシ爆弾』」俺は、カプセルに書いてあった言葉をつぶやいた。「くだらなくても『有効』なら、問題ないだろ?」
俺は足元に開いている穴へと飛び込み、飛空艇の船内へ侵入した。




