272話 6月20日#05
「……で、どうしたらいいの?」
夕方、俺たち全員が集合場所の大きな公園に集まると、ソラとレイが、カヤからもらったリストを見せた。
「えっと、まず……」ソラはリストを読みながら、リアに向かって言った。「あたしたち星霊使いの3人は、西と南と東の城門近くで敵を待ち伏せして……その後、カヤのいる『塔』へ向かう……」
「って、星霊使いが4人も『塔』に固まるってこと?大丈夫なの?」
「……らしい。ピエール33世は、リアの足代わり……それから……」ソラはテンの方を向いた。「あなたは、この公園で敵を迎え撃つ……」
「……ここに敵が来るの!?」
「うん……で、カイトは、」ソラはテンの発言に頷いてから、俺の後ろの方を指さした。「公園の反対側で戦う」
「……それだけ?」
「いや。私たち全員がどういう選択をするかも重要らしい」
今度は、レイが説明を始めた。
「私は『街の人が巻き込まれるのも厭わず全力で戦うこと』」
「……なんだ、そりゃ!?」俺は思わず声を漏らした。
「あたしは、魔法盾を絶対使わないこと……」
ソラの条件も、かなり厳しい。
「リアは、最後までカヤを守りきること」
「……え?」リアが戸惑っていた。「そいつ、星霊使いじゃないの?」
「カイトは、全力であの『塔』の階段を最上階まで駆け上がること」
「……何か、随分具体的だな」
俺は、遠くからでも見える高い『塔』を見つめて、「どんだけキツいんだ」と、心の中でつぶやいた。
レイはピエール33世の方を向いた。
「ピエール33世は、全力でみんなを守って……力を失うことだ」
『だ、大丈夫です!ワタクシ、神ですから!……たぶん……』
「……あれ?僕は?」
テンが首を傾げると、ソラが一番深刻そうな顔をした。
「……たぶん、あなたが一番大変……」
「……え?」
「あなたが考え得る限りで……本当に一番の、最悪の事態を経験すること……」
「……え?」
テンは少し考えた後、突然顔色を悪くした。
「……まさか」
「……で、その上で、」レイは腕を組んだ。「私たち全員が、それぞれどの選択をするかで、未来が大きく2通りに分かれるそうだ」
「片方は……一見絶望的に思えて、最後に月の神様を復活させられる未来……」
「もう1つは、それより無難だけど、私たち全員が死ぬ未来」
「『それより』って、結局どっちにしろ、今回の戦いは悪い結果になるってことか?」
「まあ、それはそうらしい」
――とりあえず、心の準備をした方がよさそうだ。
「……それ、いつ起こるの?」
「今夜……10時くらい……」
「……まだ時間はある」俺は全員に話しかけた。「みんな、しっかり準備しろ……あと、」
俺はニヤッと笑った。
「全員、自分の選択が正しいと信じろ。絶対、最後は俺たちが勝つ」
「……だな」レイはさすが、精神的な強さを見せた。「私は、どんな相手でも選択でも、絶対に悪い結果は出さない」
「あたしも頑張る……」ソラはしっかり頷いた。「カヤさんの忠告をしっかり守って……勝ちに行く!」
「何か面倒そうだけど、仕方ないわね」リアが肩をすくめた。「あたしも精一杯頑張るわ……過去一で!」
「僕も……大丈夫!」テンは、握りこぶしを作った。「どんな逆境も、乗り越えてみせる!」
『みなさん、素晴らしい!』ピエール33世が、やる気のオレンジ色に光った。『ワタクシももちろん、頑張りますよ!』
すると、ピエール33世はアームを突き出した。
『では、円陣を組んで!』
「……は?」
リアは納得していないようだが、みんなで手を突き出してピエール33世のアームの上にかざした。
『さ!リアさん!ワタクシの上に乗って!』
「……仕方ないわね!」リアは言われたとおりにして、その小さな手をかざした。
「絶対に、一番いい未来を勝ち取るぞ!!!」
俺がそう言うと、全員が手を空高く打ち上げた。
『「「「「「おーーーーーー!!!!!!」」」」」』
その後、リアがひと言。
「あたし、こういう暑苦しいの、苦手なんだけど」
『まあまあ、そう言わずに』ピエール33世は、リアを乗せたままその場でくるんと回った。『こういうのも、たまにはいいでしょ?』
「……『たまには』ね」




