273話 6月20日#06
「あー。そうだ、カイト」
レイが突然、俺に話しかけてきた。
「……カヤが、これ持ってろって」
レイに手渡されたものは、銀色の小さな『石』だった。
「……それは?」
「『かに座の石』だ。カイトが持っているのが一番いいと言ってたぞ」
「は、はあ……」
俺は『太陽星座』も『月星座』もかに座ではないので、ちょっと意味がわからない。
「ね、ねえ。レイさん」テンが近づいてきた。「ちょっと、来てくれないかな……」
テンが手招きしているので、レイはとことこ後を追った。
あんまり見ない方がいいのかな……と、俺が迷っていると、テンがレイに話しかける声が聞こえてきた。
「あのね、レイさん。僕ね…………」
しかしそれ以上何も言わないので、レイは首を傾げていた。
テンは身を屈めながらしばらくレイを見つめた後、柔らかく微笑んだ。
「レイさん。お互い頑張ろう!きっといい未来が待ってるよ!」
「あ、ああ。そうだな!」
レイはめっちゃ戸惑っていたが、テンの言葉に力強く頷いた。
――一方、リアも何だか不安そうだった。
「……そもそも、本当にその『カヤ』って奴の未来予想って、当たるの?」
『そうですねー』リアを乗せているピエール33世が、淡い緑色に光った。『彼女自身の魔力量にもよると思いますけど、当たると思いますよ。星霊使いの『未来予知』は』
「……マジで?」
『ええ。未来の『可能性』まで視えるので、とても予測の精度は高いです』
「……ということは、敵は必ずここへやって来る……」ソラも、いつもよりぼんやりとしているように見える。
「『敵』って、具体的に誰だっけ?」
「『うお座の星霊使い』と、ドゥファン……」
「……へえ、親玉2人が揃って出てくるわけね」
リアは周囲を見渡した。
公園では、学校帰りの子どもたちや、犬の散歩をしている人たちなどの姿を見かけた。とてもではないが、ここで星霊使い同士の戦いが起こるようには見えない。
「……そいつらみたいな無粋な奴は、嫌い」
リアは、何かを決心したようだ。
それを見届けたピエール33世は、リアをソラに預けて、俺の方にやって来た。
『……大丈夫ですか?ボンヤリしてますが』
「『ボンヤリ』というか、みんなの様子を眺めてただけ……」
俺はふうと、息を吐いた。
「さっきの話を聞いていると、俺は体力を使うだけで、それ以外につらいことはないと聞こえたんだが、きっと実際には違うんだろうな」
――おそらく、俺の『選択』が、一番重い。
『カイトさん、あんまり気負わないでください』ピエール33世は青く光った。『いつもどおり、しっかり状況を見極めて冷静に行動すれば、きっと上手く行きます!』
「まあ、そうだな」
俺は立ち上がり、息をゆっくり深く吸った。
「きっといい未来が待ってる。そう信じることが結果に表れるんだよな」
――未来は、決まっていない。何も根拠はなくても、いい未来を信じ続けることが、俺たちが本当にいい未来を手にすることに繋がる。
――でも、このまま何も起こらないでほしい……
そんな考えも浮かびつつ、俺たちはその場を後にした。




