270話 6月20日#03〜塔の中で②〜
そんな話をしていたら、かごがガタンと音を立てて止まった。
「着いたよ。こっちに来て」
オギさんに連れられて、あたしたちは同じ階の中心あたりまでやって来た。そこには、古いクローゼットが1つあった。
「作業着はここにあるよ」オギさんはそう言って、クローゼットの扉を開いた。「……この部屋は明るいから、ここで着替えてね」
そう言って、オギさんはクローゼットの反対側にある扉を開けた。
その扉の向こうに、女の子が立っていた。濃い青の髪と濃い黄色の目を持っていて、着ている服は、清楚な白色。たぶん年はあたしと同じくらい……
「……ん?カヤ、どうした?」オギさんは首を傾げた。
「兄さん。わたくし、この2人と少し話したいことがあるんです」女の子は、透き通った声で言った。「仕事の説明が終わったら、作業の前に2人を借りてもよろしいですか?」
「あ、ああ。いいけど……」オギさんは戸惑っていた。「珍しいこともあるんだね」
「あ。紹介が遅れました」女の子は、丁寧にあたしたちに頭を下げた。「わたくし、『アクアガーディアン』のカヤと申します。こちらにいる『オギ』は、わたくしの兄です」
「『アクアガーディアン』……?」
「ここの水を生み出している者です。この大量の水は、全てわたくしの魔法で賄っています」
――結構な量の水だけど、人間が作ってるんだ……
「では、お仕事の話をどうぞ。わたくしは、ここの奥で待っています」
カヤさんはそう言って、この明るい部屋の、さらに奥にある扉の奥へと引っ込んでいった。
あたしとレイは作業着に着替えると、オギさんについて、『塔』の一番上にある水の噴き出し口へ近づいた。
「まず、ここのスイッチを押すと、水が止まるんだ」と、オギさんは言った。「で、まずはバケツに入っている布で……」
作業はそんなに難しくなかった。噴き出し口の水を布できれいに拭き取り、ブラシでこすって汚れを落とすだけだった。その時、可能な限り汚れた水が『塔』の外へ落ちないようにしてほしいと言われた。
「ここの水、飲料水としても使ってるから、あまり汚れた水を流してほしくないんだ」
代わりに布を絞った時の水をバケツに入れて、下まで持ってきてほしいと言われた。
「じゃあ、下で待ってるから、作業頑張って」
オギさんはそう言って、エレベーターで下へ降りていった。
オギさんを見送った後、あたしたちはカヤさんのところへと戻った。
「お時間とってすみません」カヤさんは、着替えに使った部屋で待っていた。「実は、『星霊使い』関係のことで話したいことがありまして……」
その瞬間、あたしとレイは同時に固まった。




