269話 6月20日#02〜塔の中で①〜
あたしはレイと一緒に、『湖』のほとりにある小さな建物の前に立っていた。
「……ここが、『塔』の管理人の常駐場所らしい……」あたしはレイに説明した。「ここの人に、仕事について訊く……」
「……なるほど」
レイはそう言って、扉を強めにノックして、「失礼しまーす」と言って、勝手に入っていった。
「………………」怒られたりしないかな……?
でも、出迎えたのは、明るく気さくな若い男性だった。
「おー!君たちが『清掃』の仕事をするんだね?」
男性は、椅子から立ち上がった――というか、この部屋、椅子以外何もない……
「僕の名前はオギ。あの『水の塔』の管理をしている」
「私はレイ」
「……あたしは、ソラ……」
「レイちゃんとソラちゃんだね」
オギさんは、あたしたちと握手をした。
「……で、早速仕事の話なんだけど……君たち、この街の人?」
「ううん……旅でここに来た……」
「あー、じゃあ、知らないかもな」オギさんは扉から部屋の外へ出ていった。「ちょっとついてきて。面白いもの見せてあげるから」
オギさんはそう言って、外にある『湖』のすぐそばまで歩いていった。あたしたちもその後ろをついていく。
「……ちょっと待っててね」
数秒後、水面が柔らかな光を放ち始めた。よく見ると、光は『塔』に向かって、道のように細長く通っていた。
「……じゃ、行こうか」
「…………え?」
オギさんは水面に足をつけ、白い光の道の上を歩いていった。
「人が……水の上を歩いてる……」
「面白そうだな」
レイはそう言って、オギさんに続いて『道』の上を渡り始めた。あたしも、その後について渡っていった。
オギさんは、『塔』にある水の噴き出し口のうちの1つの前で、あたしたちを待っていた。よく見ると、その噴き出している水も、白く光っていた。
「ここが『塔』の入り口だよ」オギさんは、噴き出し口を指さした。「この先は、背が180センチ以上ある人が入ると大変なことになるけど、君たちは大丈夫そうだね」
「……テン……」
「……だな」
確かに、『塔』の中は天井が低い。レイは腕を伸ばすだけで、手が天井に届いていた。
オギさんは、しばらくその場で立ち止まっていた――そしたら、『塔』の壁に等間隔に並んでいるランプの明かりが、一斉に灯った。
「……じゃ。僕についてきて」
それから、円い『塔』の1階をぐるっと半周したところで、オギさんは止まった。右手に、大きな木の箱がある。
「この中に清掃用具が入ってる」と、オギさんは説明した。「君たちには、水の噴き出し口の掃除をしてもらいたいから、この布の入っている『バケツ』と『ブラシ』を、1人1つずつ持ってほしいな」
『バケツ』には魔巧収納がついていて底が見えないし、『ブラシ』は、何だか大きな歯ブラシに見えた。
「じゃあ、上へ行くよ」オギさんは手招きした。「この自動昇降機使って、最上階まで行くから」
エレベーターは、作業用のものに似て、鉄のかごの中に入って上へ行くタイプのものだった。
でも、オギさんがスイッチを押すと、そのかごが横へガタンとずれた。
じーっと待っていると、かごがゆっくりと上昇し始めた。そしたらレイが、あたしの肩をとんとんした。
「このエレベーター、水の力で動いている」
レイが指さしている方を見ると、透明なパイプの中を、水が勢いよく落ちていた。その勢いで、中についている歯車がぐるぐる回っている。
「よく気づいたね」オギさんは、くすっと笑った。「レイちゃんの言うとおり、このエレベーターは水の力で動いてるんだ」
それからオギさんは、透明なパイプを指さした。それから反対側にある、2本目のパイプも指さした。
「実はこれ、この2つのパイプのどっちにかごがくっつくかで、『上昇』するか『下降』するかが決まる……なかなか面白い仕組みだろ?」




