267話 6月19日#02
その後は、特に何事もなくディアナへと到着した。
到着したのは夕方。赤い日の光に包まれたその街を見て、俺たちは驚いていた。
「まあ、きれい……!」
「花が咲いてる……」
「でも、ここ砂漠だよね?」
「……『ディアナ』……」
ソラがガイドブックを読み聞かせた。
「『砂漠のオアシス』……『街の中央にある塔から年中水が噴き出ていて、街全体に水を供給している』……」
「『塔から水』って、どういうこと?」
俺が訊ねると、ソラは首を振った。
「……そこまでは、書いてない……」
『とりあえず、その『塔』を見に行ってみませんか?』と、ピエール33世は提案した。
「そうだな……じゃあ、まずは『バグボート』を置いて……」
ディアナは、さまざまな花があちこちに咲いている、きれいな街だった。
特に薔薇の花が、道端や公園の中など、あらゆるところに植えられ、鮮やかで美しい花を咲かせていた。色も品種も多くてびっくりした。
街の中では、移動に『虫ぞり』が使われていた。俺たちは、少し離れたところで固まっているテンを無理やりそりに乗せ、『虫ぞり』のタクシーで『塔』まで行った。
『塔』は、結構高い建物だった。螺旋状に巻いた建物は、壁が白い石材でできていた。壁には等間隔に数十の穴があり、水が勢いよく噴き出ていた。
『塔』の周りは、『湖』のように水が溜まっていた。見たところ橋のようなものはなく、中央の『塔』の中へ歩いて行くことはできないようだ。
今は『塔』も『湖』も夕日で赤く染まっており、なかなか見応えのある景観になっていた。
「……確かに、『塔から水』だな」
俺がぽつりとつぶやくと、みんな頷いた。
「面白いといえば面白いけど……これ以上のものはなさそうだね」
――やはり、中へ入れないのは残念だ。
仕方ないので、青々と生い茂る街路樹の生えた道を歩きながら、俺たちは食堂を探すことにした。
「……そういえば、お金は大丈夫なの?」と、リアが俺に訊ねた。
「そろそろ稼ぎたいところだが……」俺はぐるっと周囲を見渡した。「『ありさん』がどこにあるかわかんねえ」
「……誰かに、訊く……?」
「それが一番早いな」
「これだけの人数いるんだから、1日だけでも結構稼げるわよね♪」
「……お前は戦力外だろ」
俺は、肩の上のリアを小突いた。
「……あ、え、ええと……」テンはぼそっと言った。「ぼ、僕もちょっと戦力外、かも……」
「……何で?」
「えっとね……あはは……」
テンが笑ってごまかしている間に、レイが口を開いた。
「なあ、カイト。『ありさん』のバイトって、犯罪者はできないものなのか?」
――あ。テンが凍りついた。
「……まあ、一応契約書にそういう文言はあるが……」
「「……『犯罪者』?」」
リアとソラの目が、テンに注がれた。
「……いやっ!まさか僕が『犯罪者』なんて、そんなこと……」
「……訊いてみただけだ」
レイはきっぱりとそう言いきった。
「別に、私はひと言も『テンが犯罪者だ』とは言ってないが」
「「「………………」」」
「そうだねっ、レイさん!」
テンは、力強く頷いた。
『と、とりあえず、テンさんとリアさんは働かないとして、他の方々は……?』
ピエール33世は、みんなの顔を1人ひとりカメラで見つめた。
「……レイさん!1人じゃ寂しいし、僕と一緒に……」
「……リアがいる」
――また、テンが衝撃を受けた顔をした。
「……あたしとデートするの、そんなにイヤ?」
リアが、拗ねた顔をして、テンに言った。
「……いや、男とデートしても……」
「あたし、見た目は女の子よ!?」
「え、えーっと、そうだけど……君は、ちょっと小さすぎるかな……」




