265話 6月18日#12
「いやっはっはっは!ごめんねーーー!!」
宿で、テンは大笑いしていた。
「負けるの嫌だったから、つい『水』以外の魔法を……!」
「『つい』じゃねえよ!」俺ははあとため息をついた。
「いやー!結構いい線いってたとは思うよ!僕の攻撃、ほとんど避けてたし!」
「……まあ。『脳筋』にしては成長しているわね」
「……てか、テンすごくね?」俺は頭を掻いた。「『火の魔法』も使えるし、あんな『落とし穴』とか……」
「あー。僕に魔法を教えた人、結構スパルタだったからねー……」
テンは得意そうに「ふふふ!」と笑った。
「……おかげで、魔法のレパートリーは豊富だよ♪」
「それで、射撃の才能あって……あんた、頭おかしいわね」
「褒め言葉として受け取っとくよ、リアちゃん!」
「この調子じゃ、テンみたいにいろんな魔法が使える奴が相手だった時に、どう対抗したらいいのか……」
「……あー」テンは手を振った。「それは考えなくていいかも。普通は、1つのカテゴリーの魔法だけ覚えるので精一杯だから」
「アリエスの魔法とか、完全に『火』と『熱』のオンパレードだし……星霊使いでさえそうだものね」
「ほら、君が買った魔法の入門書にも書いてあるよ……『まずは、1つの魔法を極めなさい』って」
――そういうものなのか……
「……とりあえず、対テン戦にはだんだん慣れてきた」俺は腕を組んだ。「問題は、レイ……」
「僕は、僕よりレイさんの方がすごいと思うなー」テンは妙にニヤけていた。「やっぱり彼女になってくれないかな……僕たち、絶対似合いのカップルになれると思うんだよねー!」
「……あ、そ」リアが遠い目をしていた。
「でも、レイがすごいのは認める」
俺は扉の向こうを見た。その方向には、レイとソラとピエール33世がいる部屋がある。
「魔法の攻撃なしであれだけ強いんだから、『魔法あり』にしたら、どんだけ破壊力があるか……」
「あれは、規格外よ……結局スコルピウスは、アリエスの1回の攻撃でやられたんでしょ?」
「うん、そう」テンは、レイのことを考えていて、本当に幸せそうだ。「ホントは僕が仕留めてもよかったんだけど、変態に一番傷つけられたのはレイさんだし、やっぱり将来の彼氏としては、彼女に花を持たせた方が……!」
「……恐ろしいカップルだな」
「……ね」
気づけば俺も、リアと同じく遠い目をしていた。
「……あ!でも最近、僕たち少し仲良くなったと思わない?」
「……プルートーにいた時くらいから、少しは打ち解けてきてる気がするが……」
「でしょ、でしょ!?」何か今日のテン、めっちゃテンション高い。「この前なんか、二人きりの時にレイさんが僕に……あ!やっぱりこの話は秘密にしとく!」
「……アリエスがあんたに何したの?」
「教えなーい!」
「ちょ!あたしにだけでも教えなさい!」
「ダメ!レイさんと2人だけの秘密だから!」
「……楽しそうで、何よりだ」
――最近よくわからないのは、レイの方だ。
これだけあからさまに『好きです』アピールされてるのに、なぜ反応が薄いんだ?
「もしかして、本当は気づいてる……?」
――思えば、出会った頃より表情が柔らかくなったような……?
はっきりと気づいているわけではないけど、テンから影響は受けているのかもしれない――それか、わざと無視してる。
「レイって、ホント何考えてるのかよくわからない……」
女子ってそんなものなのか?――いや、レイはやっぱり『規格外』のような気がする……




