264話 6月18日#11
日が傾き、砂漠の街が茜色に染まった。
俺たちは『ピエール号』でオリオンまで帰り、『バグボート』を返却し、警察にファールの身柄を引き渡した。
警察によると、ファールが勝手に作った『ダム』は、川が涸れきった時に撤去されることになっていたらしい。元々流量が季節によって大きく変動する川なので、『ダム』の機能がほとんど失われる夏の終わり頃に壊す計画があったようだ。
俺たちはその説明を聞いてから、とことこと街の中を歩いていた。
「今回はリアちゃんのお手柄だね!」テンはそう言って、俺の肩の上に乗っているリアの頭を人差し指で撫でた。
「えへ♡リアだって、やればできる子なんだから♡」
「……じゃあ、今度からもっと真面目に働いてもらうか」
「や、やーねー!カイトってば……リア逃げる!」
俺の肩から降りようとするリアを捕まえながら|(「きゃあ!助けて〜〜!!」)、俺はあたりを見渡した。
「どうする?早めに飯食うか?」
「……うん……」ソラは頷いた。「……明日からの旅も過酷……早めに寝るのが賢明……」
「おお、いいな!腹減った!」レイはうんうん頷いた。「さっさと食って、さっさと寝る。それが一番……」
「寝る前に……一緒にストレッチ……」
「……え?」
夕飯を食べた後、俺はテンと、おまけにリアを連れて、街外れで模擬戦をすることになった。
「い〜ね〜!君のその努力家なところ、僕は好きだよ〜!」
「ちなみに、なぜリアは一緒に来たんだ?」
「あんたが負けたら、いじってやろうと思って♪」
「………………」
一方、レイが食事中にウトウトし始めたので、レイと、付き添いのソラとピエール33世は、早めに宿へと向かった。
「いや〜!レイさんと一緒にいるのは最高に楽しいけど、こうして男3人で、郊外で試合ってのもなかなかいいね!」
「気持ちはわかるが……さっさと始めるぞ」
前回のテンとソラの戦いを見てから、いろんなことを考えた。
思えば、テンは銃にしろ魔法にしろ、『狙って当てる』攻撃ばかりだ。ということは、何とかして至近距離まで近づけば、俺にも勝機はある。
――俺の剣に付いてる魔法陣のおかげで、至近距離で銃撃を受ける心配はないし。
でも、その『近づく』ためには、かなりの技術が必要だ。
俺はできるだけ右へ回り込みつつ、テンが銃か魔法、どちらを使おうとしているか、動きを見て予想した。
テンは、前回の反省もあってか、銃撃を、魔法ではなく目で照準を合わせることもした――日が陰って結構暗くなっているのに、一体テンの目はどうなってるんだ?
なので、ソラの時より照準合わせに自由度が増えた。俺は銃撃を避けにくくなった。
代わりにテンは、魔法で攻撃することが若干減った。
『てんびん座の石』は事前にリアに預けてあるので、どんな魔法が来るのか、呪文からは予測できない。
でも、何度かテンと戦って、『水の魔法』がどんな特性を持つか、だいぶわかってきた。
「……あれ?避けられちゃった♪」
テンは余裕そうにケラケラ笑っていた。
「……たく!こっちは必死でやってんのに!」
俺はぶつぶつ文句を言いつつ、テンの銃撃を剣で受け止めた。
――水は、基本的に『風』や『火』のように下から巻き上がることはない。火の魔法で蒸発させればまた違う話だが。
ということは、どんな魔法でも『上』の方から、『下』にいる俺に向かって発射されることになる――その上、基本的に『直線的』に攻撃される。方向を決める力が、ほぼ射出時のみに決まるからだ。
――というわけで、結論。
「……魔法陣の向きを見極めれば、『水の魔法』をほぼ避けきることができる……!」
俺は銃撃を防ぎ、魔法を避け、テンに肉薄した。
「……あれー?」テンは、少し困った顔をした。
――と、思ったら、テンは何やら呪文を唱えた。
その瞬間、俺の視界がグラッと揺れた。
足元を見た俺は、目を見開いた。
「落とし穴!?」
俺はバランスを崩したまま、テンが「ばーん!」と言いながら撃った銃弾で、脳天を撃ち抜かれた……
「……いってええぇえ!!」




