262話 6月18日#09
鎮火した後の村を歩いていると、他の誰もいないところに1人だけ、地面でくすぶっている人がいた――おそらく、本物のファールだ。
俺たち3人が近づくと、反対側からソラたちが近づいてくるのが見えた――レイの炎をソラの魔法盾で耐え抜き、無事だったようだ。
「おい、ファール」俺は倒れている人に向かって話しかけた。「ちょっと話があ……」
「一目散に逃げるでござるー!!」
ファールは突然復活し、どこかへ走り去ろうとした。
「……ったく!」
俺は、テンからもらった『カプセル』を、ファールに向かって投げつけた。
すると、ファールの体の周りに白い布|(包帯?)が現れ、ファールをぐるぐる巻きにした。
「ふぎゃ!」
ファールは足をもつれさせ、地面に倒れた。
「人の話を聞け」
俺はファールの前で向かい合い、その場にしゃがんだ。
「お前、『ふたご座の星霊使い』だろ。ちょっと話があるんだが」
「……なぜ、そのことを知っているでござるか?」
「……見ればわかるわよ!」リアはソラの肩の上で仁王立ちをした。「あんた、あれでも隠してたつもり?」
「聞いた話によると、お前は『うお座の星霊使い』の仲間らしいな」
「……え?」
「洗いざらい話してもらうぞ!」
「……え?」
――というわけで、俺たちはファールを尋問した。
――といっても、俺たちは何も暴力的なことはしなかったのだが、全員で囲んで睨みつけたら、素直に白状した。
――まず、『分身』について。
予想どおり、ファールは『分身』を作る魔法が使えるが、どうやらその『分身』を維持する|(生き長らえさせる)には、膨大な魔力が必要らしい。
自分の魔力だけでは賄いきれない量の『分身』を養うため、とにかく何でもいいから色んなものを集め、闇市などで売って、その金で魔法石を買おうとした。
……のだが、修行で長年この世界から離れていたため、何が価値があって何がガラクタなのかよくわからず、手当たり次第に盗みまくっていたようだ。
「私の方が、よっぽどこの世界を理解しているな」
――レイの言うとおりかもしれない。
もちろんこの『村』は、その『分身』を匿うための施設だった。自分自身は食料や水がないと生きていけないため、分身にダムを造らせ水を確保し、その水で野菜を作り、生活していたようだ。
「我ながら、天才的な思いつきでござる!」
ユピテルやオリオン以外の街でも盗みを働いて金を稼ぎ、魔法石を得ようとしていたらしい。
……で、その驚きの移動方法は、
「拙者、風に乗って空を飛べるでござる!」
「風に……乗る?」
「体重が200グラムになれるでござる!」
「……風船か」
仕組みは理解不能だが、要は魔法で風船になって、風に吹き飛ばされているということらしい。
――あと、敵に関する新情報。
「拙者たちには、それぞれ野望があるでござる!この世界を壊したら、太陽の神がその願いを叶えてくれるでござる!」
「ちなみに、君の『野望』は何?」
「『分身』たちを全員養うことでござるー!!」
「……意味不明」
ドゥファンの願いが叶い、世界が壊れた時、彼と太陽の神を支えた4人の星霊使いだけは神の力で生き残り、その後に再生する新しい世界で、自分の思いどおりの生活を手に入れることができる、と本人たちは信じている。
「『みずがめ座の星霊使い』は、ギタリストとして成功すること。『さそり座の星霊使い』は、自分以外の男のいない世界に住むこと。あと『うお座の星霊使い』は……よくわからないでござる!拙者、顔も見たことないんで!」
それぞれが、ただ自分勝手な願いを叶えようとしているだけのようだが、それで世界がめちゃくちゃになるのは納得がいかない。
「……というか、本当に『太陽の神』にはそんなすごい力があるのでござるか?」
俺がちらりとピエール33世を見やると、緑色に点滅して考え込んでいた。
――それから、『ピスケス』の能力について。
「あの人の近くに行くと、いつも気分がふわふわするでござる!何かいい匂いのする煙に包まれて、あっという間に夢の世界に……!」
――『催眠術』の類の魔法が使えるということだろうか。
「……あと、ホラー映画の耐性がマックスでござる!自分が『ホラー』らしいので!」
――やっぱり、生と死に関する、何らかの能力が備わっているようだ。
「拙者、『念話』でしか話したことがないでござる!だから男か女かもわからないでござる!」
「肝心な情報が……まあ、いいけど」
これ以上は訊いても吐かせることはできないだろうな。
スターリア(みずがめ座の星霊使い)は、子どもの頃からプロのギタリストになるのが夢だったそうです。星霊使いとしての修行を終えた後、いくつかのオーディションに挑戦したのですが、どれも落ちてしまいました。失意のうちにたどり着いたのが、『鉱石の採掘』の労働者を見張る看守長の仕事でした。その仕事に全く熱意が持てず、やさぐれていましたが、そこでピスケスから勧誘を受けます。勧誘は、ひどく悩んだ末に受けることにしたのですが、ピスケスの話を正直あまり信じていなかったようです。本当に理解したのは、ウラヌスでレイに『吹っ飛ばされた』時で、仕事の束縛から自由になれたことに、かえって喜んでいたみたいです。




