261話 6月18日#08
「テンはこっちにいるはず」
「おう!こっちだな」
そう言いながら、レイはなぜか明後日の方向へ行こうとした。
「違う!……たく、俺についてこい!」
仕方がないので、俺はレイを先導して、テンのところへ連れて行ってあげることにした。
テンはちょうど、家の中から出てきたところだった。レイが「おーい、てーん」と呼びかけると、テンは素早くこちらを向いた。
「レイさん!どうしました!?」テンは抱きつきそうな勢いでレイに近づいた――けど、レイの目の前で踏みとどまり、触れることはなかった。
「ちょっと思いついたんだけど」レイは家を指さした。「この家、水に弱いと思わない?」
「うーん、そうなんだけど」テンは苦笑いした。「僕の技術と魔力だと、こんなにたくさんの家を水で壊すのは難しいんだよねー……」
「じゃあ、『凍らせる』のはどうだ?『さそり座の石』を使えば、自分の魔力を使わなくて済むから」
すると、テンが目を見張った。
「……なるほど」
「私が張る『ウールプロテクション』を凍らせてみて」
そう言って、レイは俺とテンを宙に浮かせた後、「『ウールプロテクション』」とつぶやいた。
『羊毛』はあっという間に広がり、家同士を繋ぐように伸びていく。
やがて、全ての家に羊毛が絡みついた。
「じゃあいくよ」テンは指を鳴らした。「『アイスバーン』!」
『羊毛』が、あっという間に凍りついた。その影響で、家にも氷がまとわりついている。
「『クリムゾンブレス』!」
――そして、今度は炎が伝線した。炎は凍った『羊毛』を融かし、『羊毛』から水が滴りはじめた。
さらに驚いたことに、テンが何もしなくても『羊毛』はまた凍りついて、レイが何もしなくても炎が氷を包んだ。
凍っては融け、凍っては融け……を繰り返しているうちに、水を含んだ土の壁はどんどん柔らかくなって、家がドロドロと崩れ始めた。
「へー」テンは興味深そうにつぶやいた。「これ『ウールプロテクション』の効果?面白いね」
すっかりべちょべちょになった家から、『分身』たちが次々と外に出てきた。でも、『羊毛』が邪魔をして、思うように避難ができない。
俺は、遠くにソラとリアとピエール33世が一緒にいるのを見つけた。ピエール33世が赤く点滅して、合図を送っている。
「大丈夫だ、レイ」俺はレイに指示した。「……今だ、やっちまえ!!」
「『インフェルノ』!」
地獄の炎が、村全体を包みこむ。『羊毛』で伝線していた火も飲み込んで、火力がさらに高まった。
そして、崩れかけていた家屋が、炎の勢いでボロボロと崩壊していく。
『分身』たちは叫んでいるが、逃げ道はない。「ドロン!」の煙も見えぬまま、次々と『分身』が消えていった。
「やっぱりすごいね……レイさんを怒らせられないよ……」
テンが顔を引きつらせていた。俺はテンに「頑張れ」とだけ言って、村の様子を見つめた。




