257話 6月18日#04
ピエール号は小さい飛空艇なので、狭い峡谷でも楽々進むことができた。
俺たちは、レイの魔法でダムを飛び越えた後、ピエール号に乗って上流を目指した。
「やっぱり、ピエール号の中って居心地がいいね!」テンはそう言いながら、ミシンの台の上に布を何枚か並べ、それぞれを合わせてまち針で留めていた。
「そうだなー。何もしなくても、自分の力で進んでくれるし……」俺はソラのベンチプレスで体を鍛えていた。
「仲間以外に見られることないから、プライバシー対策もバッチリね♪」リアは服を何着か取り出して、よい組み合わせがないか探している。
「……あたしも、同感……」ソラは、床に座ってストレッチをしていた。
「………………」レイは、安定の読書タイムを満喫していた。
『……みなさん……結構自分勝手ですね……』
ピエール号の小さなため息が聞こえてきた。
『まあ、いいんですけどね』
「『村』を発見したら、知らせてくれ。俺たちで中の様子を調べてみよう」
「了解……あ。みんな、」テンが後ろを振り返った。「今からミシン使うから、少しうるさくなるよー」
「……別にいいわよ♪」リアはにこにこ笑った。「テンが作るものって、みんなかわいいから♪あたし大好きー♡」
「これ、レイさんへのプレゼントだからね」テンは背中を向けたまま、ぶつぶつつぶやいた。「まあ完成したら、リアちゃんにも見せるけど」
「楽しみに待ってるわ♪」
そんなこんなで1時間後。
ピエール号が、突然『あ』と小さく叫んだ。
「どうした?」
『ありました……村……』
「え!本当に!?」
俺たちはリビングから飛び出し、甲板へと出ていった。
確かに、遠くに家がいくつか見える。密集、というほどではないが、建物の数がそこそこ多い。
『もうちょっと近づいてみますか?』
「お願いしますっ!」
村は峡谷の断崖の上にあり、谷底には貯水池らしきものが造られていた。貯水池には、滑車のついたお粗末な水汲み機がついていて、それを使って谷底から水をすくい上げているようだ。
ここからは村の様子は見えない。だが、人が集まって会話をしているようで、にぎやかな気配がしていた。
「ここから先は歩こう」と、俺は言った。「5人と1体なら、そんなに目立たないだろうし、気づかれないと思う」
「……そうだね」テンはくるっと船室の方を向いた。「じゃ、僕はレイさんを起こしに行ってくる!」
「……ホント、レイって普段、『食べるか寝るか読書するか』しかしねえな」
「あれは……将来太るわね」
「今度、一緒にストレッチ……誘ってみようかな……」
俺とリアとソラは、じっとテンの後ろ姿を見つめていた。




