256話 6月18日#03
オリオンの住人に話を訊いてみると、興味深いことがわかった。
オリオンから北へ少し離れたところに、『カリスト峡谷』という景勝地があるのだが、そこを流れていたはずの川が、2年くらい前から流量が大幅に減ったらしい。
元々、乾季にはわずかな水しか流れない小さな川なのだが、最近は雨季の流量が乾季とそんなに変わらなくなったとか。
そして、その原因と思われるのは、いつの間にか作られていた岩のダム。完全に、峡谷の真ん中あたりを塞いでいる。
もちろん、地域の住人も、このあたりを警備している軍も、何が起こっているのか不思議に思い、調べてみた。
すると、上流に……
「『村ができてた』?」
「そうなんじゃよ」庭先でお茶を飲んでいた高齢の男性は言った。「『ドローン』を飛ばしてみると、『大岩』よりも北の方に、小さな村ができていたのが見えたらしくてのう」
しかも、そこに住んでいる『誰か』は、何回かあった軍による警告を無視したため、軍は強行作戦に出た――村に突入したのだ。
「ところが!」男性は首を振った。「村には人っ子ひとりいなかったのじゃ!」
「「「……え?」」」
――めっっっちゃ変な話!!
「……怪談……?」
――いや、ソラ。違うと思う。
俺たちは男性にお礼を言って、その家を離れた。
「まあ、1人だけが証言していたら、まだわかんないけど、」と、テンは言った。「こう複数人が同じ証言をしているとなると、ね……」
「たった2年で村ができて……しかも村には人がいない……」レイは首を傾げた。
「そしてこの街には、正体不明の不審者『忍者』がいる……」
「……調べた方がいいと思う?」
俺が訊ねると、みんなが頷いた。
「「「「「絶対、何かある」」」」」
俺たちは、『バグボート』に乗って『カリスト峡谷』へ向かった。
川は、噂どおり水がちょろちょろ流れているだけで、『バグボート』でも十分奥の方へ行くことができた。
しばらく進むと、噂の『ダム』が見えてきた。本当に、峡谷を塞ぐほど大きい。
「……さて。来てみたはいいが」俺は『バグボート』から降りながら言った。「どうしようか?」
『とりあえず、ワタクシが岩の向こうに何があるか、見てきますね!』
ピエール33世はそう言って、ダムの上に向かって飛んでいった。
「頼んだわよ、月の神様!」
――数分後。
ピエール33世が戻ってきた。
「どうだった?」
『ここからは村は見えませんでした。たぶん、もっと奥の方にあるのでしょう……あと、』
ピエール33世が、紫色に光った。
『やはりこのダム、水をせき止めるために造られたようです。こちら側より川の流量が多かったです』
「俺たちが歩けそうな感じだったか?」
『ええ。でもたぶん、『バグボート』では行けませんね』
「……どうする?」
『あ!たぶんワタクシなら行けます!』ピエール33世は、今度はオレンジ色に光った。『峡谷なので、日陰ありますし!』
「そうか」俺はニヤッと笑った。「じゃあ、久しぶりに『ピエール号』に乗るか!」




