255話 6月18日#02
「……なーんか、朝から変な騒動に巻き込まれたねー」
朝食時に、テンは、いつものようにコーヒーに角砂糖を3つ入れながら言った。
「何となく、嫌な予感がするわ……また何かが起こりそうな……」
「うまうま……ま、何とかなるだろ」
「あんた。マジでいつもポジティブよね〜」
リアの毒を含んだ言い方も、レイにはどこ吹く風だった。
「あれ、カイト君?何か今日は静かだね」
「……てか、あの『忍者』が気になって」
「どして?」
みんなが首を傾げるので、俺は気になっていることを話した。
「あいつ、めっちゃ運動神経いいんだよ。あいつを走って追いかけた時、俺、全然追いつけなくて」
「え!?あのカイト君が!?」
「しかも、建物のベランダをよじ登って、上の階へ逃げようとしてたし」
「……猿か」
リアは、遠い目をしていた。
「それに、警察に捕まった後、どうやったのか知らないけど逃げ出したらしいんだ」
「……それはすごいね」テンはコーヒーをすすりながら言った。「警察の取り調べ室や留置場には『魔力吸収装置』がついていて、魔法が使えないようになってるんだ」
「……お前、詳しいな」
俺がそうつぶやくと、テンは笑ってごまかした。
「……つまり、魔法以外の方法で、警察から逃げ出したわけね」リアは首を傾げた。「……で、そいつはどうやってユピテルから出て、ここまでやって来たの?」
「まず、ユピテルは警備が厳しくて、中へ入るのも外に出るのも、検問を受ける必要があった」
それは、自分も体験した。
「しかも、ここはユピテルからかなり遠く離れている」
「……少なくとも、歩いては来れないわよね。間に山脈あるし」
「……でも、あんなに目立つ服装してたら、乗り物に乗った時、一発でバレちゃうよね」
「一体何なの?」
「……確かに……気になってきた……」
話をすればするほど、だんだん疑問が湧いてくる。
「……こういう時、少し調べた方がいいんじゃない?」
テンがそう言い、他のメンバーがテンの顔を見た。
「……だって、星霊使いって、みんな普通の人じゃないから」
「まあ、俺もお前も普通の人じゃないけどな」俺は頬杖をついた。「でもこのパターン、星霊使い関係の可能性があるよな」
「少なくとも、スコルピウスの時はそうだったわね」
「……お前の時もな」
俺がそう言うと、リアは俺の肘を右足で蹴り始めた。
「とりあえず、星霊使いなら、数年前まで修行していた」と、レイは言った。「何か活動しているなら、この2、3年の話のはずだ」
「じゃあ、その間に何か変わったことがないか、地元の人に訊いてみるか」
『いいと思いますよー!』ピエール33世は、やる気のオレンジ色に光った。『ワタクシたちのモットーは『数撃ちゃ当たる』ですから!』
「そんなモットー、要らない」
リアはそう言って膨れながら、まだ俺の肘を蹴ろうとしていた。俺は、リアを指で弾いてやり返した。




