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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
オリオン編

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254/381

254話 6月18日#01

 その翌朝のことだった。



 ――わんわんわんわん!!!



 犬の大きな吠え声で、俺たちは目が覚めた。



 「何だ!?」


 「この、ドロボー!!」なんか宿の主人の怒鳴り声も聞こえてくる。



 ――俺やテンは客だし、わざわざ見に行く必要はないのだが、あまりに気になって部屋の外へ出た。



 すると、廊下にソラがいた。



 「何かが、下の階で起こってる……!?」


 「ちなみに、レイは……?」


 「……まだ寝てる……」



 ――やっぱり。



 とりあえず、俺たちは下の階にある、宿の玄関へと下りていった。


 するとそこには、実に奇妙な光景が広がっていた。


 宿の玄関で、主人が箒を振り回している。


 床に、何やら黒い服を着た人がうずくまっている。


 そしてその人の尻に、犬のローズが噛みついている。



 「す!すまないでござる!もうしないから、見逃してくださいでござる!」



 ――あれ?この口調……



 「……まさか、『忍者』!?」


 「「「え?」」」



 宿の主人とテンと黒服の人が、同時に俺の方を向いた。



 ――その人は黒尽くめの服を着て、わら草履を履いている。そして『ござる』。


 まちがいなく、王都(ユピテル)で見た、あの『忍者』だ。


 そして、抱えている袋の中に、なぜか大量のスリッパが入っていた。



 「……今のうちでござる!」



 俺たちが唖然としている中、『忍者』は宿から飛び出そうとした。



 「……そうはさせない……!」



 ソラはそう言うと、『忍者』の背中に飛び蹴りを食らわせた。同時にローズが、『忍者』の脚に噛みつき、ニンジャは地面に倒れた。



 「ぎゃふん!」



 袋が破け、中に入っていたスリッパが玄関にばら撒かれた。



 「ちょっとあんた、話を聞かせてもらおうじゃないの!」


 「とほほ……」



 宿の主人に、奥の部屋へと引っ張られていく『忍者』。


 ところがその時、



 「なーんて、ウソでござるー!!」



 ぼふんという音とともに煙があたりに立ち込め、俺たちは視界を奪われた。



 「けほっ!けほっ!」


 「では、さらばでご……ゲホッゲホッ!!」



 そして気がつくと、『忍者』は姿をくらましていた。






 その後、俺は宿の主人と、テン、ソラ、レイ|(ようやく起きてきた)、リア|(レイを起こしていた)、ピエール33世(おまけ)に、王都での『忍者騒動』について話して聞かせた。



 「何、その人……?」


 「随分な変人がいたもんだねぇ……」


 「そういえば、私にバナナくれた人いたなー」


 「……別にあげたわけじゃないんだが」



 俺は、ため息をついた。



 「とりあえず、不審人物であることは確かだから、警戒したほうがいい」


 「ふーん」宿の主人は、首を傾げた。「でも不思議なのは、さっきどうやって逃げたのかしら?」


 「どういうことですか?」


 「だって、私たちはともかく、ローズちゃんも『忍者』を見失ったのよ?変だと思わない?」



 ――確かに。



 あの後ローズは、『忍者』を追いかける様子はなく、不思議そうに床をくんくん嗅ぎ回っているだけだった。



 「もしかして、本(・)当(・)に(・)あの場から消えた?」


 「……ワープ……?」


 「……いや。SFじゃあるまいし」



 少なくとも俺は、ある場所から離れた場所まで『転移』する魔法なんて、聞いたことがない。


 テンやソラの反応を見る限り、その知識は間違っていないと思う。



 「……ま。おかげで何も盗られずに済んでよかったわ。ありがとう!」



 宿の主人はそう言って、隣の部屋へ行って掃除を再開した。

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